コラム

外国人労働者の離職率は高い?定着率を上げるための対策も紹介

グローバル化が進む今日、日本に来る外国人労働者の数は増え続けています。多様な人材を求めて外国人を雇う企業も増えてきましたが、その一方で、外国人をうまく会社に定着させることができない企業もあります。外国人がすぐに辞めてしまう会社と、上手に外国人を組織の一員として機能させている会社の違いはどこにあるのでしょうか。この記事では、外国人が日本の会社を辞めてしまう場合の理由や、どうすれば彼らを定着させることができるのかの方法などを解説していきます。

目次

外国人労働者数の現状

日本の労働市場は、人手不足の問題に直面しており、その一つの解決策として外国人労働者の受け入れが拡大しています。厚生労働省の『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』2022年10月末のデータによれば、国内に滞在する外国人労働者数は182万人を超え、2022年は過去最高の記録を達成しました。

この182万人という数字は、2011年からの10年間で2倍以上に増加したことを示しています。


(引用)厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和4年 10 月末現在)

次に、具体的な国別の割合を見ると、最も多い外国人労働者はベトナムで、全体の25.4%を占め、次いで中国が全体の21.2%を占めています。ベトナム人の技能実習生は2017年時点で全体の45.1%を、特定技能の場合は2021年6月時点で全体の62.4%を占めています。

【国籍別】外国人労働者の割合TOP5

  1. ベトナム:462,384人(25.4%)
  2. 中国(香港、マカオ含む):385,848人(21.2%)
  3. フィリピン:206,050人(11.3%)
  4. ブラジル:135,167人(7.4%)
  5. ネパール:118,196人(6.5%)

(引用)厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和4年 10 月末現在)

産業別の割合を見ると、製造業が26.6%、サービス業(他に分類されないもの)が16.2%、卸売業と小売業が13.1%を占めています。また、宿泊業と飲食サービス業も割合を増やし、11.5%となっています。

【産業別】外国人雇用事業の割合TOP5

  1. . 卸売業・小売業:55,712事業所(18.6%)
  2. 製造業:53,026事業所(17.7%)
  3. 宿泊業、飲食サービス業:42,896事業所(14.4%)
  4. 製造業:35,309事業所(11.8

(引用)厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和4年 10 月末現在))

これらのデータから、外国人労働者が日本の労働市場で重要な役割を果たしていることは、明らかでしょう。特に、人手不足が深刻な業界では、政府が在留資格「特定技能」を導入し、外国人労働者の範囲を広げるなどの対策を進めています。

しかし、これらのデータは外国人労働者の受け入れに関連する課題も示しています。たとえば、ベトナムと日本の賃金格差が縮小しており、これにより日本での雇用選択肢が制限されつつあります。また、外国人労働者に対する差別や長時間労働など、改善が必要な労働環境の問題も存在します。

また、近年では、日本の経済成長率が低く、円安が続いていることにより、日本での外国人労働者の需要が低下しているというデータもあります。

外国人と日本人の離職

外国人労働者は、日本人と比較して、約3倍離職率が高いことがわかります。

外国人労働者の離職率は「45.9%」

厚生労働省の『直接雇用の外国人労働者の入職、離職状況』によれば、過去1年間の外国人労働者の入職と離職について、入職者は74,612人であり、離職者は59,862人でした。

前年と比較すると、入職者は11,284人増加し、増加率は17.8%でした。同様に、離職者も10,607人増加し、増加率は21.5%でした。

入職率は、過去1年間に直接雇用された外国人労働者数に対する入職者数の割合で、57.2%でした。離職率は、過去1年間に直接雇用された外国人労働者数に対する離職者数の割合で、45.9%でした。また、入職超過率は、過去1年間に雇用された外国人労働者数から離職者数を差し引いた数の割合で、11.3%でした。

(参考)直接雇用の外国人労働者の入職、離職状況

日本人労働者の離職率は「13.9%」

厚生労働省の『令和3年雇用動向調査結果』によると、厚生労働省の「令和3年の雇用動向に関する調査結果」によれば、令和3年における雇用の状況は以下の通りです。入職者数は7,200.6千人で、離職者数は7,172.5千人で、入職者が離職者を28.1千人上回っています。

就業形態別に見てみると、一般労働者は入職者数が4,045.7千人で、離職者数が4,129.9千人で、離職者が入職者を84.2千人上回っています。一方、パートタイム労働者は入職者数が3,154.8千人で、離職者数が3,042.7千人で、入職者が離職者を112.1千人上回っています。

年初の常用労働者数に対する割合である入職率は14.0%、離職率は13.9%で、入職超過率は0.1ポイントです。前年と比較すると、入職率は0.1ポイント上昇し、離職率は0.3ポイント低下しています。

性別に着目すると、男性の入職率は12.5%で、離職率は12.8%です。一方、女性の入職率は15.7%で、離職率は15.3%です。就業形態別に見ると、一般労働者の入職率は10.9%で、離職率は11.1%です。パートタイム労働者の入職率は22.0%で、離職率は21.3%です。女性とパートタイム労働者は入職超過の状況にあり、一方、男性と一般労働者は離職超過の状況です。

前年と比較すると、男性の入職率は上昇し、離職率は横ばいでしたが、女性は入職率と離職率が低下しました。また、一般労働者は入職率と離職率が共に上昇し、パートタイム労働者は入職率が低下しました。

(参考)令和3年雇用動向調査結果

外国人労働者の離職率が高い理由

外国人労働者の離職・転職理由について詳しく説明します。

①待遇(給与)への不満がある

日本で働く場合、給与や労働条件は非常に重要です。

特にアジア諸国から日本で働く外国人労働者は、母国の家族に仕送りしている場合が多く、「毎月いくら稼げるのか?」を重視している方が多い印象です。

また、欧米諸国からの外国人労働者を見てみると、日本の平均賃金がこの30年間、上がっていないことや円安の影響で、いくら日本が好きだからという理由で働いても、母国で稼げる給与の半分から1/5程度になってしまう日本の労働環境は、魅力的には見えないのが現状でしょう。

また、一部の職場では、外国人労働者に対して日本人労働者と比べて低い給与や不適切な労働条件を提供するケースがあります。外国人労働者が同じ仕事をしているにもかかわらず、不平等な待遇を受けることで、離職を選択することもあります。

②人間関係やビジネスカルチャーに順応できない

日本のビジネスカルチャー(企業文化)は世界中の独自の特徴があり、外国人労働者にとっては馴染みにくい場合があります。

たとえば、上司と部下との垂直な関係や、同期入社の社員との横のつながりなどが挙げられます。このようなビジネスカルチャーの違いは日本で働く経験の少ない外国人にとっては理解しにくく、とてもストレスになることでしょう。

特に外国人受け入れに慣れていない企業では、外国人労働者に対する適切なサポートやフォローアップが不足していることもあります。

国籍ごとに雇用する際のポイントや注意点をまとめていますので、下記記事からご確認ください

③スキルアップやキャリアアップができない

日本人と比較して外国人労働者は、自身の能力やスキルを最大限に活用できる職場環境を求める傾向が高く、その職場環境で「これ以上スキルアップできない」と感じたり、「自身の潜在能力を活かせない」と感じたりすると、日本人よりも決断早く、容易に転職する傾向があります。

④差別的な扱いを受ける

あってはならないことですが、一部の日本企業では、外国人労働者に対して差別的な言動や扱いをすることがあります。これらの問題は、ニュースなどにも取り上げられています。

日本人による無意識の差別や偏見によって、外国人労働者は居心地の悪さを感じ、職場でのストレスが高まることで離職につながっています。

例えば、外国人であることを理由に、特定の業務やプロジェクトから排除されたり、協力的でない態度を受けたりすることがあります。これらの差別的な経験が、外国人労働者のモチベーションを低下させ、離職の要因になります。

⑤高い日本語能力の要求される

職種や業界によっては、高度な日本語能力が求められることがありますが、雇用している外国人労働者がその企業が求める日本語力に達していない場合、コミュニケーションや業務遂行が難しくなり、ストレスが蓄積します。また、日本語能力が不足しているために昇進や評価の機会を逃すことで不満を抱くこともあるようです。

外国人が日本を去る理由

これまでは、外国人労働者が離職・転職する理由を紹介してきましたが、ここからは、外国人が日本を去ってしまう理由を紹介します。

①日本文化が合わなかった

外国人が日本に滞在する際、文化や社会の違いに適応することが難しい場合があります。日本の独特な社会規範や礼儀正しい慣習に慣れるのは時間がかかり、一部の外国人はこの適応困難さを理由に帰国することがあります。

②孤立感と社会的孤独

一部の外国人は、日本社会において孤立感を感じることがあります。日本人とのコミュニケーションの障害や、友達やサポートネットワークの不足が、社会的孤独感を生み出す要因です。

③言語の壁

日本語は非常に複雑な言語であり、外国人にとっては学習が難しいことがあります。日本語の不得意な外国人は、日常生活や仕事でのコミュニケーションが制約されるため、日本を離れることが考えられます。

④就業環境の問題

一部の外国人は、日本の就業環境に関して不満を抱くことがあります。長時間労働や過度なストレス、労働条件の不満足などが、外国人労働者の離脱の理由になることがあります。

⑤ビザの制約

日本でのビザの種類や制約により、外国人の滞在期間が限られることがあります。一部の外国人は、ビザの更新や変更に制約がかかり、帰国を余儀なくされることがあります。

⑥家族の希望や事情

家族連れの外国人は、家族の健康や教育などを考慮し、帰国を選択することがあります。家族の希望や事情が外国人の滞在期間に影響を与えることがあります。

外国人労働者定着率

外国人定着のための効果的な対策方法と注意点

ここからは外国人定着のための効果的な対策方法と注意点を紹介します。

①業務内容に納得できない場合

解決策

採用時には、業務内容を詳細に説明し、外国人労働者が自身のスキルや経験を活かせるような業務を割り当てることが重要です。また、業務の進行に伴って新たなタスクが発生した場合も、その都度説明を行い、理解を確認することが求められます。

注意点

定期的なフィードバックや評価を行い、業務内容や役割についての誤解を解消することが必要です。また、外国人労働者が自分の業務に対する期待と現実のギャップを感じないよう、透明性を保つことが重要です。

②上司の指導方法が合わない場合

解決策
上司には、外国人労働者に対する適切な指導方法やコミュニケーションスキルを学ぶための研修を提供することが有効です。これにより、上司自身が外国人労働者の視点を理解し、適切な指導を行うことができます。

注意点
文化的な違いを理解し、尊重することが重要です。一方的に日本のやり方を押し付けるのではなく、相手の視点を理解しようとする姿勢が求められます。また、上司が外国人労働者の意見や提案を尊重し、適切にフィードバックを行うこと

③職場の人間関係がストレスとなる場合

解決策

職場でのハラスメント防止研修を定期的に行い、職場の雰囲気や文化を改善することが重要です。また、職場のダイバーシティを尊重し、異なる文化背景を持つ労働者が互いに理解し合える環境を作ることも必要です。

注意点

外国人労働者が感じるストレスは、日本人労働者とは異なる場合があります。そのため、外国人労働者の視点を理解し、適切なサポートを行う必要があります。

④待遇へ不満がある

解決策

外国人労働者に対しても、日本人労働者と同じ仕事をしている場合は同じ賃金を支払うべきです。これは法的な義務であり、また、外国人労働者のモチベーションを高め、定着率を向上させるためにも重要です。

注意点

健康保険や厚生年金などの社会保険に加入させるだけでなく、休暇制度や社員旅行など、日本人労働者と同等の福利厚生を提供することも重要です。これにより、外国人労働者が安心して働ける環境を整えることができます。

これらの対策を講じることで、外国人労働者の離職率を下げ、より長く企業に貢献してもらうことが可能になります。

外国人労働者が離職することで起きる問題

外国人労働者が離職すると、日本の企業には様々な影響が出ます。その影響は、人材不足から業績の低下、そして企業の国際化への挫折にまで及びます。まず、人材不足は最も直接的な影響です。特に、技術や専門知識を持つ外国人労働者が去ると、そのスキルギャップを埋めるのは困難です。また、新たな人材を探し、採用、トレーニングするとなるとコストがかかります。

次に、業績の低下も深刻な問題です。外国人労働者がいなくなると、その労働力の欠如が生産性やサービスの質に影響を及ぼす可能性があります。また、外国人労働者が顧客との橋渡し役を果たしていた場合、その関係が断たれることでビジネスチャンスを逃す可能性もあります。

さらに、企業の国際展開の失敗も見過ごすことはできません。外国人労働者は、新たな視点やアイデアをもたらし、企業がグローバル市場に適応するのを助けます。彼らが去ると、そのダイバーシティとイノベーションの源が失われ、企業の成長が阻害される可能性があります。これらの影響を避けるためには、企業は外国人労働者の定着を重視し、彼らが働きやすい環境を整備することが重要です。

外国人を定着させる成功の秘訣

外国人労働者の定着率を高めるためには、彼らにとって働きやすい環境を整えることが重要です。具体的には以下のような対策が有効です。

高度な日本語を求めない環境の整備が大切です。高度な日本語を求められることは外国人労働者にとって大きなストレスになります。社内ではわかりやすい日本語を使うことや、英語でのコミュニケーションも取り入れるなど、外国人労働者に寄り添った労働環境を整えることが求められます。また、定期的に日本語の講習会を行い、外国人労働者の日本語能力を高めることも有効です。

以下の記事は外国人にできるだけわかりやすく伝えることができる「やさしい日本語」についての記事です。参考にしてください。

さらに、キャリアアップできる環境を整えることも重要です。外国人労働者は、日本の企業で長く働いてもキャリアアップの道筋が見えないと感じ、離職を考えることがあります。キャリアアップが可能な道筋を明示し、評価基準を明確にすることで、外国人労働者のモチベーションを高め、定着率を向上させることができます。

メンターシップの制度は、外国人労働者が職場に溶け込み、長期的に働くことを促進します。また、外国人労働者が自分の能力を十分に発揮できる環境を提供することで、企業全体の生産性や効率性も向上します。それぞれにメンターを配置し、悩みや質問を聞きやすい環境を構築することが有効です。

最後に、異なる文化を受け入れることも大切です。外国人労働者の中には、宗教上の理由や家族のイベントなど、仕事よりも大切にしていることがあります。それらの文化を尊重し、受け入れることで、外国人労働者は自分が尊重されていると感じ、企業に定着しやすくなります。

これらの対策を講じることで、外国人労働者の定着率を高め、企業の多様性と生産性を向上させることが可能になります。外国人労働者が持っている多様な視点やスキルを最大限に活用し、企業の成長を支えるためには、彼らが働きやすい環境を整備することが不可欠です。

外国人労働者の労働環境

まとめ

外国人労働者の定着率を高めるためには、適切な評価、待遇改善、キャリアパスの整備、メンターの配備、価値観や文化の相互理解など、多方面からの取り組みが必要です。これらの取り組みを通じて、外国人労働者が自分の能力を十分に発揮でき、長期的に働くことができる環境を整備することが求められます。

加地 志帆 /外国人実習雇用士

この記事を書いた人

加地 志帆 /外国人実習雇用士

2019年にYOLO JAPANに入社し、外国人ユーザーの満足度向上を目指し、特にSNSを通じたプロモーション活動を担当。その経験を通じ現在は、企業が外国人採用をスムーズに進められるようヨロワークのウェブサイトにて情報発信。具体的には、外国人採用プロセスの支援、異文化理解を促進するコンテンツの提供。 2023年11月には外国人実習雇用士の資格を取得。企業と外国人が共存できる社会を目指すため外国人採用の知識を深めている。

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