外国人労働者の需要が増加し、労働力不足を解消するために外国人採用が増えている中で、企業は効果的なコスト管理を行う必要があります。外国人採用に際しては、候補者募集、法的手続き、社員移動、研修・教育、社会保険・税金、サポート体制、採用プロセス、リファラル採用、外国人インターンシップやワーキングホリデーなど、多くのコスト要因が関与します。
この記事では、それらのコストを抑えるための具体的な方法や戦略について紹介していきます。
日本で働く外国人労働者の現状
日本での外国人労働者は、労働力不足の対策として急増し、2022年10月末には約182万人に達し、過去最高を達成しています。主に農業、建設業、医療分野での需要が高まり、日本経済において重要な役割を果たしています。
したがって、この労働力不足への対応として、外国人採用が一般化し、ビザ申請、雇用契約書の作成、研修などに関連するコストも増加しています。
(参考)厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ |厚生労働省
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外国人採用にかかるコストの一覧
ここからは、外国人採用にかかるコストの一覧を紹介していきます。
1.候補者募集に関するコスト
2.法手続きや行政手続きに関するコスト
3.社員移動・リロケーションに関するコスト
4.研修・教育コスト
5.社会保険や税金に関するコスト
6.サポートスタッフやインフラ整備に関するコスト
候補者募集に関するコスト
候補者募集には、様々な方法があるため、自社で採用したいターゲット層により最適な方法を選ぶことが重要です。
(1)求人広告
インターネットや新聞、業界特定の雑誌に求人広告を掲載することで、広く求職者にアプローチします。求人広告にかかる費用は、媒体や広告内容に依存し、一般的には20万円前後から始まります。掲載期間や応募者への対応サポートも費用に含まれる場合があります。
(2)人材紹介エージェント
専門のエージェントを利用することで、スクリーニング、面接調整、候補者の紹介などをサポートしてもらえます。人材紹介エージェントの手数料は、新卒採用の場合、採用者1名あたり約50万円程度が目安です。中途採用であれば年収の30%〜45%が相場になります。
また、外国人に特化した専門エージェントを利用することで、質の高い候補者を見つけることができます。エージェントの手数料は、一般的に採用者1名あたり50万円程度が目安ですが、契約内容によって変動します。
(3)キャリアフェア
外国人専用のキャリアフェアやジョブフェアに出展することで、直接候補者と接触できます。フェアへの出展費用は、出展の規模や場所によって異なりますが、数十万円から数百万円になることがあります。
(4)社内紹介(リファラル採用)
既存の社内ネットワークを活用し、社員からの紹介によって候補者を探すこともあります。一般的にリファラル採用の場合、紹介した社員に対して報酬を支払う場合もあります。その際の報酬額は30万円未満の会社が多いです。
(5)LinkedInやソーシャルメディア
LinkedInや他のソーシャルメディアプラットフォームを活用して、求職者とコンタクトし、求人情報を発信することができます。これらにかかる費用は、広告宣伝費用(数万円〜数百万円)や求職者へのコミュニケーションコストが発生します。
その他にも、オンラインで面接する場合は、ZoomやGoogleMeetなどのツール代やサービス利用料が別途かかってくるでしょう。
法手続きや行政手続きに関するコスト
外国人労働者を雇用する際にかかる法的手続きには、以下のようなコストがあります。
(1)ビザ申請手数料
外国人技術者のビザ申請には、一般的に約4万円の手数料がかかります。この費用には、必要な書類の作成、申請手続きのサポート、入国管理局への提出などが含まれています。ただし、ビザサポート業者を利用する場合や、ビザの種類や申請内容によって手数料が異なる場合があります。したがって、事前に確認が必要です。また、ビザの取得後も更新や変更手続きが必要な場合があるため、それに伴う費用も考慮しておくことが重要です。
(2)法律相談費用(弁護士や行政書士など)
外国人労働者の雇用に関連する法的相談費用は、一般的に約10万円かかることがあります。これにより、雇用契約や法的手続きに関するアドバイスやサポートを受けることができます。
(3)雇用契約書の翻訳費用
雇用契約書の翻訳には、約5万円程度の費用がかかることがあります。外国人労働者との契約を明確にするために、正確な翻訳が必要です。
社員移動・リロケーションに関するコスト
外国からの社員の移動には、渡航費用、住宅手当、家賃補助、荷物の輸送費用など、重要なコストが関連しています。これらの費用を適切に計画し、スムーズな社員の移動と適応をサポートする必要があります。
◆社員移動・リロケーション費用の目安
・渡航費用(航空券、移動費など):15万円
・住宅手当、家賃補助(3ヶ月分):30万円
・荷物輸送費用:10万円
など
研修・教育コスト
外国人労働者の日本語研修費用、文化研修・オリエンテーション費用、社内研修・セミナー費用も検討する必要があります。これによって、外国人労働者が組織に適応し、業務を遂行するためのスキルと知識が向上します。
◆研修・教育コスト費用の目安
・日本語研修費用:20万円
・文化研修・オリエンテーション費用:5万円
・社内研修・セミナー費用:10万円
など
社会保険や税金に関するコスト
外国人労働者のための健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険費用、および所得税、住民税などの税金が年間約50万円と60万円程度かかります。これらの費用は法的義務であり、適切に処理する必要があります。
◆社会保険や税金費用の目安
・健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険費用:年間約50万円
・所得税、住民税などの税金:年間約60万円
サポートスタッフやインフラ整備に関するコスト
通訳・翻訳サービス費用やITインフラ、オフィス環境の整備費用も考慮すべきです。外国人労働者が円滑に業務を遂行できる環境を整えることは、成功の鍵です。
◆サポートスタッフやインフラ整備費用の目安
・通訳翻訳サービス費用:10万円
・ITインフラやオフィス環境の整備費用:10万円
外国人採用のコスト削減方法
ここからは、外国人採用のコスト削減方法を詳しく紹介していきます。
1. 外国人専用求人サイトの活用
2. 助成金や補助金の活用
3. 無料または低コストのリクルーティングプラットフォームを活用
4. 自社内での研修・教育の実施
5. 外国人労働者のサポート体制整備
6. 採用プロセスの効率化
7. リファラル採用の積極的な活用
8. 外国人インターンシップやワーキングホリデーの活用
外国人専用求人サイトの活用
外国人の採用を効率化するために、外国人専用の求人サイトを活用することをお勧めします。これらのサイトは、採用プロセスを合理化し、求職者と企業のマッチングをサポートします。
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まとめ
外国人採用に伴う様々なコストは、効果的なコスト削減方法を導入することで、企業は多様な人材を活用しつつ経営効率を向上させることが可能です。外国人労働者の採用に際しては、単にコストに焦点を当てるのではなく、長期的な視点で人材育成や定着率の向上にも注力するべきです。今後ますます進展するグローバル化の中で、外国人採用のコストとメリットを充分に理解し、適切な採用戦略を練ることが求められます。