コラム

【2023年最新】入管法改正の内容とメリット・デメリット、賛否意見を徹底解説

入管法についてしっかりと把握しておくことは、外国人採用を行う上で必要不可欠です。入管法は社会情勢や入出国の状況に応じて頻繁に改正されるため、最新の情報にアップデートしておくことがトラブルを未然に防ぐ上で重要です。そこで今回は、2019年から2023年における入管法改正の動向と特定技能について解説します。

特定技能という新たな外国人採用の方法

そもそも「入管法(出入国管理及び難民認定法)」とは

内閣府男女共同参画局では、「出入国管理及び難民認定法(入管法)は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とした法律」と定められています。

簡単に、分かりやすく説明すると、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」は、日本に入ったり、出たりする時に、みんなが公平にルールに従って行動するための法律です。そして、この法律には、難民の人々がどうやって助けを受けるかを決めるルールも含まれています。

入管法に関わる出入国在留管理庁(旧:入国管理局)とは

出入国在留管理庁(旧:入国管理局)は、法務省の外局で、主に出入国管理業務と在留管理業務を担当します。具体的には、ビザの審査や発行、在留期間の延長、在留資格の変更、出入国審査を実施します。また、在留者情報の管理や法令の遵守監視、外国人への指導とサポートも行います。さらに、難民認定業務を担当し、難民申請者の審査と認定を行います。外交特別業務では、国際社会との交流や国際協力を推進します。これらの業務を通じて、外国人の日本への出入国と在留を管理し、法令を順守し安全な環境を維持する役割を果たしています。

この法律は特定の目的に基づいて制定され、最近では定期的な改正が行われています。具体的にどのような変更が行われたか、さらに現在も改正が審議中で、どのような提案が検討されているのかを最新情報から過去にさかのぼる形で説明します。

【2023年6月】入管法改正案の可決「難民申請をしている外国人の強制送還」

2023年6月に可決された入管法改正案の主要なポイントは、難民の保護ではなく、「難民申請中の外国人の送還規定の一部変更」です。

これまでの規定では、難民認定申請中には強制送還が停止されていましたが、改正案では「例外」を設け、難民認定申請が3回目以降の場合、送還が可能となります。

そもそも「難民」とは

難民とは、故郷を迫害や紛争などの危険から逃れ、国外に避難し、そこで保護を求める人々を指します。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、「自国で迫害や紛争、暴力などの脅威に晒され、生命、自由、人権を守ることができない者が、国外に逃げ、自分たちの安全を確保するために避難せざるを得ない者」と定義しています。

難民について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧いただけます。

日本の難民認定率が低い理由
日本の難民認定率が低い理由は、2010年に日本がすべての難民認定申請者に対して一律で就労を許可したことがきっかけです。その結果、難民としての生活を必要としない者も難民認定を受けようとする人々が増加しました。

この偽装難民の在留を防止するため、2018年に就労許可が廃止され、難民認定の基準が厳格化されました。また、日本の難民の定義が狭いことも、難民認定率の低さに関係しています。日本が加入している難民条約の定義では、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという恐怖を有するために国籍国の外にいる者を難民としています。

この条約は政治亡命者を念頭に置かれており、現在のロシアとウクライナの戦争による難民には当てはまらない見方もあるのです。そのため、日本では戦争から逃れてきた人たちを難民と認めないことがあるようです。

さらに、手続きの運用についても問題が指摘されています。難民と認められなかった外国人の不服申し立て審査を担当する「難民審査参与員」の選定について、ある参与員は年間1200件ほどを担当する一方で、他の参与員は年間数十件にとどまるなど、非常に偏りがあることも、日本の難民認定率の低さに関連しているのです。

入管法改正による日本のメリット

この送還規定の改正の主な目的は、不法滞在などで強制退去を命じても、送還を拒否する外国人の退去手続きを進め、入管施設での長期収容を減少させることです。日本のメリットとしては、不法滞在や強制退去の問題に対処し、入管施設での収容期間を短縮することが挙げられます。

ただし、この改正案により「本来保護すべき難民」が送還される可能性が高まる懸念も存在します。

国際的な批判を受けている現状

この改正案は国際的にも批判を受ける内容とされています。国際的な人権基準やリスクに関する懸念が指摘されており、政府と与党はそれにもかかわらず改正案を推進しました。

国連人権理事会の特別報告者や恣意的拘禁作業部会は、この改正案が国際的な人権基準を満たしていないとの懸念を表明し、国際的な人権問題について日本政府に書簡を送付しました。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も、「難民条約で送還が禁止されている国への送還の可能性が高まり、好ましくない状況を引き起こす可能性がある」と指摘し、報道でもこの懸念が取り上げられています。

野党などは、日本の難民認定率の低さを理由に「本来保護すべき難民が送り返されてしまうのではないか」と再三指摘しましたが、政府の説明が懸念を解消するには至らなかったとされています。

今回の改正で変わること

今回の改正では、難民認定基準が厳格化される一方で、人道上の危機にある人々を難民条約上の難民に準じて「補完的保護対象者」として受け入れる制度も含まれています。

これまで日本は難民条約を厳格に解釈しているとして批判されてきましたが、先進国では難民条約に当てはまらない場合でも、身体的な脅威がある場合には難民条約を補うかたちで保護すべきだという「補完的保護」の考え方が浸透しています。

この観点から受け入れ対象として想定されるのは、ウクライナやアフガニスタン、シリアなどの戦争や内戦状態にある国から逃れた人々です。したがって、今回の改正により日本の難民認定率は上昇する可能性もあるとされています。

【2021年】入管法改正案の内容と取り下げの動向

2019年に導入された「特定技能」制度に続き、2021年に新たな入管法改正案が提出されました。この改正案には以下の3つのポイントがあります。

2021年の入管法改正案の要点
1. 合法的な在留者を明確に区別する
2. 適切で迅速な不法滞在者の送還
3. 長期間の拘留を減少し、適切な処遇を提供する

外国人の日本入国が増加する一方で、不法滞在者も増加の兆候を見せていました。この状況が安全上の懸念を引き起こし、改正案が提出される契機となりました。結局、この改正案は2022年に取り下げられましたが、その背後にはどのような背景があるのでしょうか。以下で詳細を見ていきます。

改正案の取り下げの背景

この改正案には、不法滞在者を厳格に帰国させることと同時に、難民認定手続き中の外国人についても3回以上の申請がある場合、強制送還できる規定が含まれており、更に送還を拒否する者に対して刑事罰が科せられる厳しい内容が盛り込まれていました。このため、改正案が提出された初期から、人権保護の観点から懸念の声が寄せられました。

その中でも、改正案の動向を左右したのは、収容施設でスリランカ出身の女性が死亡したという痛ましい事件でした。この事件を契機に、出入国在留管理庁の対応に対する広範な批判が噴出し、人権保護に関する問題が浮き彫りになりました。これが改正案の取り下げに繋がった要因と言えます。

改正案の問題点

改正案に関して、いくつか問題点が浮かび上がりました。まず、難民認定申請が3回目以降の場合、出入国在留管理局の判断によって送還が可能となる規定は、難民保護の観点から問題があると指摘されました。難民として認定された人々を帰国させることは、帰国後の安全保障を確保できない可能性があるため、慎重に検討すべきでした。

二つ目の問題は、不法滞在者の監視を担当する「監理人」制度の設立でした。監理人には、不法滞在者の生活を監督し、入管庁に報告する責任が課せられました。しかし、家族や弁護士が監理人に任命されると、報告を恐れて支援活動が制約される可能性が指摘されました。更に、送還を拒否すると刑事罰が課されるという改正案の内容に対しても、外国人が帰国後に生命の危険に晒される可能性があることから、問題視されました。

2021年の「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」は最終的に取り下げられました。その背後には、人権保護に関連する問題が多く存在したためです。

【2019年】入管法改正|新たに新設された「特定技能」

入管法(出入国管理法)は、略称であり、正確な名称は「出入国管理及び難民認定法」です。

この法律は、その起源が古く、1951年10月4日に戦後間もなく公布されました。特に2019年の改正によって、外国人を雇用したいと考える企業にとって重要な新しい要素である「特定技能」という在留資格が導入されました。

この「特定技能」の導入により、国内の特定産業分野において人手不足が問題とされていた状況で、専門性やスキルを持つ外国人を雇用できるようになりました。

以前は、外国人が「技能実習生」として日本に来た場合、最長で5年間しか滞在できませんでしたが、技能実習から特定技能への在留資格の変更により、5年経過後も引き続き日本で働くことができるようになりました。これにより、外国人が日本で技能を習得し、その後帰国するという従来のパターンを打破し、日本企業が外国人を長期間にわたって受け入れることが可能となりました。

この変化により、日本企業が外国人採用に力を入れる動きが増え、人手不足に対処するための新しい道が開かれました。

新たに新設された「特定技能」とは

「特定技能」とは、日本の労働力不足を克服するための新しい在留資格で、2020年4月から導入されました。この在留資格は、現在の人手不足が深刻な12の分野での就業を可能にします。特に注目すべきなのは、この在留資格を取得できるのは、一定の日本語能力と技能を持つ人々であり、そのため現場ですぐに働ける即戦力として期待されている点です。

さらに、2023年8月31日からは、介護以外の11の分野でも「特定技能」2号が拡大される予定です。1号と2号の違いはいくつかありますが、最も大きな違いは在留期限です。特定技能1号の在留期限は最長5年であるのに対し、2号には在留期限が設けられていません。このため、特定技能の外国人労働者が今後増加することが予想されています。

外国人採用を行う上での入管法

外国人採用を行う上で入管法の動向は重要

以上で見てきたように、2019年に導入された「特定技能」によって、外国人採用のハードルは大きく下がりましたが、その後も入管法の改正については様々な議論が行われており、その動向からは目が離せません。外国人を採用する日本企業にとっては、しっかりと把握しておかないと適切な対応がとれない恐れがありますので、常日頃からしっかりと動向をチェックしておくようにしましょう。 入管法改正の動向としては、専門分野の外国人は積極的な受け入れを推進しています。今後、特定技能の創設と受験機会拡大、高度人材のポイント制の調整など、受入れ拡大が見込まれます。技能実習生については、失踪技能実習生対応の施策が公表され、留学生においては在籍管理の徹底が図られる方向です。

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