飲食店やコンビニを利用した際に、留学生のアルバイトが接客を担当しているのを見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。アルバイトで学費や生活費を稼ぎたいと考えている留学生が、人手不足解消の一助となっているケースが増えています。ここでは、留学生のアルバイトを採用する際の面接の攻略法についてお伝えしましょう。
外国人留学生のアルバイト事情
まずはじめに、外国人留学生の日本でのアルバイト事情を紹介します。
アルバイトで生活費を稼ぐ
外国人留学生が日本でアルバイトする理由の一つとして、生活費を稼ぐ必要性が挙げられます。日本は一般的に生活費が高く、特に都市部では食事、住居、交通費、学費、保険料などの支出がかさみます。そのため、外国人留学生はこれらの費用を賄うために収入源が欠かせません。外国人留学生が支払わなければならない費用は、学校や大学の授業料だけでなく、生活費も含まれます。さらに、学生ビザを取得するためには一定の財政証明が必要であり、アルバイト収入はこれをサポートする一因となります。
また、ジョブリサーチセンターが2019年に行った「留学生2,000人のアルバイト実態調査」でも、アルバイト探しの際に外国人留学生が最も重視しているのは「給与」で、約37%の留学生がこれを優先して考えています。さらに、アルバイトを経験した外国人によれば、最も良かった点は「生活費の補填」であり、半数以上の外国人留学生がこの理由を挙げています。
(参考)留学生2,000人のアルバイト実態調査 vol.3 アルバイト探しの重視項目、はじめた理由 | JBRC ジョブズリサーチセンター
アルバイトで日本語上達を目指す
多くの外国人留学生は、自身の日本語力に自信を持てず、「アルバイトを探しても言葉が不十分だから難しいだろう」と考えがちです。しかし、実際には日本語が不得意だからこそ、アルバイトを通じて効果的に日本語を向上させることができるのです。
例えば、スーパーマーケットやコンビニでアルバイトをすることで、多くの商品と接する機会が増えます。自然と商品名を覚える必要が生じ、単語力が向上します。また、アルバイトを通じて同僚やお客様とのコミュニケーションを積極的に図ることで、日本語に慣れ親しむことができます。真剣に取り組めば、日常会話スキルを迅速に磨くことができるでしょう。
さらに、アルバイトを通じて敬語の使用を学ぶメリットも大きいです。敬語は日本語特有の概念であり、多くの外国人留学生にとって難解な要素です。アルバイトでは接客マニュアルを通じて、正確な敬語の使用方法やシチュエーションについて学ぶ機会が提供されます。
要するに、日本語が未熟な外国人留学生にとって、アルバイトは、日本語力を向上させる良い機会なのです。
留学生コミュニティへの理解を深めることが重要
留学生同士の結び付きは、思いのほか強いものです。同じ系列店で働く留学生から教えてもらったことが、アルバイト応募のきっかけになる留学生も数多くみられます。異文化で生まれ育った留学生がアルバイト先に馴染むのは、日本人以上に苦労することもあるでしょう。企業側に留学生アルバイトを受け入れやすい企業風土があると判断されれば、面接に来てくれる留学生も増え、人材不足が解消されやすくなります。
面接は、留学生アルバイトと向き合い、良好な関係性を築くきっかけとなるものです。威圧感を与えることなく相手の緊張を解きほぐして、親しみやすさを感じさせるようにしましょう。また、留学生は日本に対して憧れを抱いて来日している人が多いです。
アルバイトを通して、日本企業の商習慣や成長ぶりに触れ、人間成長の糧としたいと願っている留学生の期待に応えられるよう、面接時から真摯で前向きな姿勢を示すことが求められます。不安や疑問点がないかを尋ね、質問に対して丁寧に答えることも大切です。コミュニケーションが円滑に取れて、安心感を持ってもらえると、長期的にアルバイトを続けてもらいやすいでしょう。
外国人留学生のアルバイト面接時に確認すること
外国人留学生のアルバイト事情について紹介してきましたが、ここからは、実際に面接する際に確認するべきことを3つ紹介します。
確認事項①資格外活動許可の確認
外国人労働者の採用面接においては、まず在留資格をきちんと確認することが大事です。在留資格や在留期間を知るため、在留カードを提示してもらうようにしましょう。留学生の場合は、在留資格の欄に「留学」と記されています。海外からの留学生は、本来的には学業が目的で来日しているため、就労はできません。しかしながら、資格外活動許可を得ると、一定の就労時間内であればアルバイトをすることが可能です。1週間あたり28時間までと法で定められていて、長期休暇中については40時間までの労働が認められます。決められた就労時間を守って働いてもらえるよう、面接時にきちんと話をすることが必要です。
確認事項②就労時間の確認
アルバイトを掛け持ちしようとしている留学生が面接に来た場合は、注意してください。複数の勤務先がある場合は、その合計時間が就労時間の上限となります。既に他のアルバイト先で勤務しているという留学生の場合は、現在の就労時間がどれぐらいかをきちんと確認してから採用するようにしてください。就労時間が超過してしまうと、留学生にとっても採用する企業側にとっても、厳しい罰則が科されます。たとえ、留学生に悪気はなくても、法律違反が判明すれば、強制送還されてしまうこともありますので、慎重に対応してください。
確認事項③履歴書の提出
また、日本人のアルバイトの面接時と同様に、履歴書を提出してもらい、履歴書の記載事項を確認しながら面接をすることも大事です。日本に来てからどれぐらい経つのか、どんなことを専門的に勉強しているのか、といった事項に触れて話を進めるなかで、人となりを理解するようにしましょう。
外国人留学生を面接する際の注意点
注意点①文化理解と尊重
外国人応募者の文化背景を理解し、それを尊重することは極めて重要です。異なる背景を持つ個人の価値観、信念、行動様式を把握することで、誤解を回避し、健全な対人関係を築くことが可能です。特に日本の労働環境に不慣れな外国人応募者に対して、明確かつ具体的なフィードバックを提供することが有益です。これにより、候補者は自身の強みや改善点について洞察を深め、自己成長を促進することができます。
注意点②公平性と差別の排除
面接は、応募者がスキルと経験に基づいて公平に評価され、平等な機会を享受できるようにするためのプロセスです。面接官は差別的な要素を考慮に入れず、各応募者の能力と資格に基づいて判断を下す責任があります。また、面接時の質問も法的規制に従うべきです。
- 年齢差別:面接官は候補者の年齢を理由に採用の判断を下すことはできません。年齢に関する質問は避けましょう。
- 性別差別:性別に基づく不公平な扱いや偏見は法的に禁止されています。性別に関する不適切な質問も回避すべきです。
- 宗教的信念の尊重:個人の宗教的信念は尊重され、採用の判断に影響を与えてはいけません。
- 障害者の尊重:物理的または精神的な障害を持つ個人に対しても公平な扱いが求められます。必要であれば、適切な調整を行うべきです。
- 性的指向および性自認の尊重:LGBTQ+の個人に対する差別は禁止されています。
- 人種および民族の尊重:人種、肌の色、国籍、民族などに基づく差別は厳禁です。
- その他の差別の排除:妊娠、家庭の状況、政治的信念、社会的地位などに基づく差別も同様に禁止されています。
外国人留学生のアルバイト面接例
最後は、外国人留学生のアルバイト面接の際の質問例をいくつか紹介します。
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自己紹介と来日の目的について
最初に、留学生候補者に自己紹介をしてみましょう。これにより、候補者の日本語レベルやコミュニケーション能力を確認できます。また、来日の目的や留学生活での目標について尋ねることで、その人の動機や熱意を理解することができます。
例:「自己紹介をお願いします。なぜ日本に来たのか教えてください。」
前職や以前のアルバイト経験について
候補者の以前の経験について尋ねることで、その人がどのようなスキルや経験を持っているかを理解することができます。
例:「前に、仕事やアルバイトをしたことがありますか?そのとき、何か新しいことを学びましたか?」
仕事に対する期待や目標について
アルバイトに対する期待や目標を尋ねることで、候補者がどのような意欲や熱意を持っているかを把握できます。
例:「この仕事で何か目標がありますか?あなたが理想とする仕事の環境はどんな感じですか?」
就労可能時間や期間について
留学生はビザの制限により、週28時間以内しか働くことができません。そのため、就労可能時間や期間について確認しておくことが重要です。また、学業目的である留学生は、基本的に平日の日中は学校に通います。多くの留学生が、学校終わりの夜や土日祝日に働いています。勤務できる時間が限られているため、勤務可能な時間帯について事前に聞いておきましょう。
例:「いつ働けるか、教えてください。」「何日間働けるか、教えてください。」
日本語レベルについて
職務内容によっては、ある程度の日本語力が求められます。そのため、日本語の読み書きや会話レベルについて確認すると良いでしょう。
例:「日本語を読むこと、書くこと、話すこと、それぞれどのくらいできますか?」「日本語のテスト(日本語能力試験)を受けたことはありますか?」
対応可能な他の言語について
インバウンドにより、外国人観光客が急増しています。それに伴い、飲食店をはじめコンビニやホテルなど、さまざまな業種でインバウンド対策が重視されています。そのため、留学生に母国語など対応可能な言語を確認することで、インバウンド対策に繋がります。
例:「日本語以外に、どの言葉を話せますか?」
資格外活動許可について
留学生は、資格外許可を貰うことによって、週28時間以内であれば働くことが出来ます。しかし、許可がなければ就労が出来ないので、事前に確認することが必要です。
例:「アルバイト(資格外活動)の許可はありますか?」
チームワークや問題解決能力について
チームワークや問題解決能力は、どのような職種でも重要なスキルです。そのため、それらについての質問を通じて、候補者の協調性や創造性を評価することができます。
例:「困難な状況を経験した時、どのように対処しましたか?また、チームで働くさいに大切にしていることは何ですか?」
以上が留学生アルバイトの面接の一例です。これらの質問を通じて、候補者の語学力、就労可能時間、ビザステータス、スキル、経験、人間性を知ることができます。留学生のアルバイト採用は、企業に新たな視点や文化の理解をもたらし、多様性を高める良い機会となるでしょう。
留学生アルバイトの面接で注意する点を理解しておこう
留学生アルバイトの面接では、日本語レベルを見極めると共に、定められた就労時間の遵守について確認しておくことも大切です。日本人アルバイトを採用する時と同様に、真面目に仕事に取り組めるか、周囲とコミュニケーションを取れるか、といった人間性を判断することも求められます。
人手不足解消にも役立つ有能な留学生アルバイトを採用できるよう、慎重に面接をするようにしてください。