人手不足が深刻化するビルクリーニング・清掃業界において、労働力確保のため特定技能という新たな選択をする現場が増加傾向にあります。特定技能には1号と2号の2種類あり、ビルクリーニング業は特定技能1号として認定され、専門的な技術を身に付けた外国人はビルクリーニングにおける即戦力として期待できる人材です。そこで今回は、近年注目を集めている特定技能「ビルクリーニング」について、具体的な業務内容例を挙げ解説します。
ビルクリーニング業界の現状
日本のビルクリーニング業界は、都市部を中心に多くの商業施設や高層ビルが存在し、需要が比較的安定しています。また、ホテル、病院、学校、公共機関など、多様な施設で清掃サービスが必要です。特に都市部では不動産開発が盛んで新しいビルが建設されるため、市場は拡大傾向にあります。
ビルクリーニング業界は、市場拡大の機会がある一方で、人手不足や高齢化などの課題にも直面しています。効果的な労働力戦略や技術革新が必要とされ、業界全体の持続可能性を確保するための取り組みが進行中です。
ビルクリーニング業界の課題
ビルクリーニング業界でも、人手不足が深刻な問題となっています。高所作業や特殊な清掃作業に従事する技術熟練の作業員が不足しており、企業は従業員の採用や育成に苦労しています。この人手不足は業界全体の労働力コストの上昇につながっています。
また、清掃業界では、高齢化も進行しており、特に高所作業や体力を要する作業に従事する従業員の高齢化が顕著です。高齢者の労働力を活用するために、企業は適切な作業環境や労働条件を提供する必要があります。また、高齢者の技術や経験を活かす取り組みも行われています。
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特定技能「ビルクリーニング」の概要
特定技能「ビルクリーニング」は、日本のビルメンテナンス業界において、外国人材の不足を解消し、一定の専門性と技能を持つ外国人を受け入れるために設けられた在留資格制度の一つです。
この制度は2019年4月に導入され、多くの分野で外国人材の雇用を可能にしました。ビルクリーニング分野もこの制度の対象となっており、特定技能1号の在留資格を得た外国人は、ビルメンテナンス会社で最長5年間働くことができます。
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雇用形態は、特定技能1号では派遣や業務委託は認められず、直接雇用の形態に限られます。
特定技能1号と2号
特定技能「ビルクリーニング」には、特定技能1号と2号の2つのカテゴリーが存在し、外国人材の技能レベルに応じて異なります。1号は高い技能を持つ外国人向けで、専門的なスキルが求められます。
一方、2号は1号よりも技能要件が低く、特定の分野での受け入れが可能で、家族帯同が認められ、在留期限の更新に制限がないため、長期的な滞在を希望する外国人に適しています。
公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を得るためには、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が実施する特定技能1号評価試験の実技試験に合格し、さらに日本語能力試験(JLPT)に合格する必要があります。この制度を利用して、ビルクリーニング業界における外国人材の雇用が促進されています。
特定技能「ビルクリーニング」の仕事内容
特定技能「ビルクリーニング」の仕事内容は、主に事務所、学校、興行場、店舗など、一般の人々が利用する建築物内部の清掃業務を含みます。具体的な業務には、日常清掃や定期清掃などが含まれます。
また、特定技能1号のビルクリーニングの在留資格を持つ外国人は、一定の範囲内でホテル客室のベッドメイク作業にも従事できるようになりました。
清掃業務
特定技能「ビルクリーニング」の外国人は、建築物内部の清掃業務全般を担当します。具体的な業務には、床、天井、内壁、トイレ、洗面所などの清掃が含まれます。
建物外部洗浄作業
高所作業を伴わない窓ガラス外壁清掃作業を除く外壁や屋上などの建物外部の洗浄作業も行います。建物の外部を清潔に保つ役割があります。
ベッドメイク
ホテルでのベッドメイキング業務を含みます。限られた時間内にベッドを迅速に整え、次のチェックインのために客室を準備する重要な業務です。
植裁管理作業
建築物内外の植栽や緑地の管理作業を行います。これには灌水作業や植物の手入れが含まれます。
資機材倉庫の整備作業
清掃に使用する資材や機材の整備や保管に関わります。作業に必要な資材を効率的に運用し、保管します。
資機材運搬作業
別の現場に移動する際、必要な資材や機材を運搬する作業があります。業務の円滑な進行に必要な役割です。
清掃関連の什器や備品の取り扱い
清掃作業に使用する器具や備品についての取り扱いを学び、メンテナンスし、適切かつ安全に使用します。
特定技能「ビルクリーニング」の取得方法
外国人材が特定技能1号「ビルクリーニング」を取得する手順と条件について詳しく説明します。
特定技能1号「ビルクリーニング」を取得するためには、下記方法のいずれかを選択し、必要な要件を満たす必要があります。取得方法について詳細な情報は関連する公的機関のウェブサイトで提供されています。
技能試験と日本語能力試験の合格
外国人材が特定技能1号「ビルクリーニング」を取得するためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
(1)技能試験(判断試験と作業試験)の合格
技能試験は「ビルクリーニング分野特定技能業評価試験」として、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会によって実施されます。試験は日本国内と一部の国々で行われており、詳細な申込情報は同協会のウェブサイトで提供されています。
(2)日本語能力試験(以下のいずれかの試験)の合格
・国際交流基金日本語基礎テストの合格
・日本語能力試験(N4以上)の合格
日本語能力試験は、上記の「国際交流基金日本語基礎テスト」または日本語能力試験(N4以上)から選択できます。
技能実習2号からの移行
特定技能1号「ビルクリーニング」の取得には、もう一つの方法があります。それは「ビルクリーニング」分野の技能実習2号から移行する方法です。
技能実習2号は、技能実習制度に基づいて一定期間技能実習を受け、要件を満たすことで取得できる在留資格です。新たに整備された「特定技能」制度により、技能実習2号から特定技能1号への移行が可能となりました。この場合、ビルクリーニング分野の特定技能1号評価試験は免除されます。
特定技能「ビルクリーニング」で求められる日本語力
前述の通り、特定技能「ビルクリーニング」で求められる日本語力は、「国際交流基金日本語基礎テストの合格」または、「日本語能力試験(N4以上)の合格」です。
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受入れ企業に求められる条件
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を採用するために企業に求められる条件と要点をまとめます。
ビルクリーニング分野での特定技能外国人の採用に際しては、関連する公的機関や協議会の最新のガイドラインに従ってください。
特定技能所属機関(受入機関)としての登録
ビルクリーニング業で特定技能外国人材を受け入れる企業は、「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けている必要があります。
具体的には、以下の条件のいずれかを満たす必要があります。
・建築物衛生法第12条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業に登録している事業者
・建築物衛生法第12条の2第1項第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業に登録している事業者
支援体制の提供
特定技能所属機関(受入機関)は、特定技能外国人に対し、住居の契約に連帯保証人となるなど、多くの支援を提供する義務があります。ただし、この支援業務を「登録支援機関に委託する」ことができます。外国人材のサポートを適切に行うため、登録支援機関の選定や協力が求められます。
ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入
企業は、ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入が義務付けられています。この協議会は厚生労働省が設置し、ビルクリーニング分野の業界団体、試験実施主体、制度関係機関などで構成されています。企業は協議会の構成員として、調査や指導に協力する役割が求められます。
まとめ
特定技能「ビルクリーニング」は、ビルメンテナンス業界の外国人材不足を解消し、専門性と技能を持つ外国人の雇用を促進する在留資格制度です。日本のビルクリーニング業界は都市部で急成長し、需要が安定していますが、人手不足や高齢化などの課題も抱えています。
特定技能1号は高い技能を要求し、技能試験と日本語能力試験の合格が必要です。企業は特定技能所属機関としての登録と、外国人材への支援提供が求められ、特定技能ビルクリーニング協議会への加入が義務です。この制度は外国人材のビルクリーニング業界への受け入れを助け、業界の発展と持続可能性を支えています。