コラム

特定技能「漁業(養殖業)」とは?業務区分や要件、人数枠、試験など徹底解説!

日本の漁業における人手不足は深刻な課題となっています。労働条件の過酷さや地方の過疎化、少子高齢化などがその背景にあります。このような状況を受け、2019年に導入された特定技能「漁業(養殖業)」制度は、外国人労働者の受け入れを通じて人手不足を解消しようとする取り組みです。

この記事では、特定技能「漁業(養殖業)」の要件や試験内容、現状の人手不足の課題、さらには漁業業界への外国人労働者の貢献について詳しく解説していきます。

特定技能「漁業(養殖業)」とは

特定技能「漁業(養殖業)」は、2019年に創設された制度であり、外国人が漁業に従事することを可能にするものです。この制度は、労働人口の減少が進んでいる産業分野において、人手不足を解消するために設立されました。

特定技能「漁業」の在留資格を取得する外国人には、最長で5年間の受け入れが可能です。この資格を取得するためには、「漁業技能測定試験」と「日本語能力試験(N4以上)」に合格する必要があります。また、技能実習2号修了者も特定技能「漁業」に受け入れ可能であり、その場合は漁業技能測定試験や日本語能力試験が免除されます。技能実習2号修了者であることを証明するためには、「技能実習生に関する評価調書」などの提出が必要です。

詳しくは後述します。

漁業の人手不足の現状

漁業の人手不足は、多くの要因によって引き起こされています。農林水産省の『漁業構造動態調査』によれば、2003年から2020年までの間に漁業従事者数は約23万人から約13万人へと急速に減少しました。この減少の背景には、漁業の労働条件の過酷さやマイナスイメージ、地方都市の過疎化と少子高齢化などが挙げられます。

漁業の労働条件は厳しく、天候に左右される労働時間の不規則さや体力の要求などが若者の新規参入を妨げています。また、地方自治体の過疎化と少子高齢化により、漁業に必要な労働力が減少しています。この結果、漁業労働者は高齢化し、後継者不足が深刻な問題となっています。

農林水産省では、新規就業者を増やすための補助事業を実施していますが、漁業・水産業の課題は依然として残っています。そのため、外国人技能実習生や特定技能外国人の受け入れが積極的に行われており、漁業労働力の補充策として注目されています。しかし、漁業では構造的な問題も抱えており、漁船や漁具のメンテナンス、漁獲量の不安定さなどが挙げられます。

特定技能「漁業(養殖業)」での受け入れの現状

特定技能分野において、特定技能1号の在留資格は5年間で最大34万5150人まで受け入れが定められています。特定技能「漁業」分野では、最大6,300人(以前は9,000人)に設定されています。2023年6月末時点での特定技能1号における在留外国人数は173,089人であり、そのうち漁業分野に関しては2,148人です。

特定技能「漁業(養殖業)」の職種(業務区分)

特定技能「漁業」では、業務区分が「漁業」と「養殖業」の2つに分けられます。それぞれ詳しく紹介していきます。

特定技能「漁業」の業務区分「漁業」

・漁具の製作/補修
漁具の製作や修理を行います。漁船や漁網、漁具類など、漁業に必要な機材や器具の製作や補修が含まれます。これには機械加工や溶接、縫製などの技術が必要です。

・水産動植物の探索
漁場や養殖場を調査し、水産動植物の生息や成長状況を調査します。海洋生物学や生態学の知識が必要であり、GPSや水中カメラなどの機器を使用して調査を行うこともあります。

・漁具/漁労機械の操作
漁船や漁具の操作を行い、漁業活動を支援します。船舶や機械の操縦技術が必要であり、海洋ナビゲーションや操船技術の習得が求められます。

・水産動植物の採捕
漁獲した水産物を捕獲する作業を行います。漁獲方法には様々な技術や技能が必要であり、釣りや巻き網、トロール漁などの方法があります。

・漁獲物の処理/保蔵
漁獲した水産物を適切に処理し、保管します。処理方法には水揚げ、解体、加工などが含まれます。また、保管には冷凍、冷蔵、塩漬けなどの方法があります。

・安全衛生の確保等
漁業活動における安全衛生を確保し、事故や災害を防止します。これには適切な安全装備の着用や作業環境の確保、定期的な安全教育などが含まれます。

特定技能「漁業」の業務区分「養殖業」

・養殖資材の製作/補修/管理
養殖に必要な資材や施設の製作、修理、管理を行います。これには養殖池や養殖装置の製作やメンテナンスが含まれます。

・養殖水産動植物の育成管理/収獲(穫)/処理
養殖された水産物の育成管理や収穫、処理を行います。水質管理や餌の与え方、収穫方法などが含まれます。

・安全衛生の確保等
養殖業における安全衛生を確保し、環境保護や公衆衛生に配慮します。これには水質管理や病気予防、残留農薬や水質汚染の防止などが含まれます。

特定技能「1号」漁業(養殖業)の外国人要件

特定技能「1号」漁業の外国人要件として大きく「特定技能評価試験・日本語試験に合格するパターン」と「漁業分野の技能実習2号からの移行するパターン」の2つに分かれます。

漁業分野の技能実習2号からの移行するパターン

修了と区分移行
技能実習2号の漁船漁業または養殖業の各職種を良好に修了した場合、漁業分野の漁業区分または養殖業区分に移行することが可能です。

漁船漁業の場合、かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、棒受網漁業の各作業を修了した場合に漁業区分に移行できます。養殖業の場合、ほたてがい・まがき養殖作業を修了した場合に養殖業区分に移行できます。

技能試験の免除
技能実習2号を良好に修了していれば、技能試験の受験が免除されます。技能実習2号の修了によって、漁業や養殖業における実務経験や技能を証明することができるため、特定技能1号への移行時に技能試験を受ける必要がありません。ただし、区分移行時には移行先の区分における技能試験に合格する必要があります。

日本語能力試験の免除
技能実習2号の修了によって、日本での生活や業務に必要な日本語能力を習得していると見なされ、日本語能力試験の受験が免除されます。技能実習2号を良好に修了した外国人労働者は、特定技能1号への移行時に日本語能力試験を受験する必要はありません。

以上の条件を満たす場合、技能実習2号の修了者は特定技能1号への移行が可能です。ただし、改正された運用要領に基づき、新たに「棒受網漁業」が漁業職種に追加されたため、この職種を修了した技能実習生も特定技能1号への移行が可能となりました。

特定技能評価試験・日本語試験に合格するパターン

漁業技能測定試験(漁業)または漁業技能測定試験(養殖業)
漁業(養殖業)分野において、特定の技能水準を証明するために漁業技能測定試験(漁業または養殖業)に合格する必要があります。これは、日本の漁業や養殖業における実務技能や知識を持っていることを証明するものです。試験は、漁業分野における具体的な作業や技能に関する内容を含んでいます。

日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)
国際交流基金が実施する日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)のN4以上のレベルに合格する必要があります。これは、日本での業務や生活に必要な基本的な日本語能力を証明するものです。日本語能力試験は、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの能力を評価する国際的に認められた試験であり、N4以上のレベルを達成することで、外国人労働者が日本の社会でコミュニケーションを円滑に取る能力を証明することができます。

特定技能「2号」漁業(養殖業)の外国人要件

特定技能2号に移行するための試験は、2024年7月ごろに日本国内で実施される予定です(受付は6月ごろ)。技能試験を受験するには、事前に実務経験を証明する手続きが必要です。技能試験は漁業や養殖業の区分ごとに実施され、漁業分野特定技能2号評価試験の開始時期については、農林水産省や各関連団体の公式ウェブサイトで最新情報を確認できます。

特定技能2号に移行するために必要な業務内容や経験は、漁業と養殖業の両分野で、作業工程を管理する者としての2年以上の実務経験が必要です。自身が行う作業に加えて、他の作業員を指導し、作業全体を管理する能力が求められます。

特定技能2号への移行には、適切な書類の提出も必要です。申請書類には、2号漁業技能測定試験の合格証明書や日本語能力試験(N3以上)の合格証明書などが含まれます。また、特定技能外国人の受け入れに関する誓約書や協議会の構成員であることを証明する書類の提出も必要です。特定技能2号に移行するための必要書類については、出入国管理庁の公式ウェブサイトで確認できます。

特定技能2号漁業(養殖業)に就くための主な3つの要件を紹介します。

2号漁業技能測定試験の合格

特定技能2号漁業(養殖業)に就くためには、2号漁業技能測定試験に合格する必要があります。この試験は、漁業と養殖業の業務区分ごとに実施されます。技能試験は、日本語での学科試験と実技試験(写真やイラストを使用)からなります。試験は、民間事業者が農林水産省によって選定された場所で実施されます。

日本語能力試験(JLPT)N3以上の合格

日本語能力試験(JLPT)のN3以上のレベルに合格する必要があります。この試験は、独立行政法人国際交流基金や日本国際教育支援協会によって実施されます。

実務経験の要件を満たす

漁業の場合、漁船法上の登録を受けた漁船において、操業を指揮監督する者を補佐する者、または作業員を指導しながら作業に従事し、作業工程を管理する者としての2年以上の実務経験が必要です。養殖業の場合、漁業法および内水面漁業の振興に関する法律に基づく養殖業の現場において、養殖を管理する者を補佐する者、または作業員を指導しながら作業に従事し、作業工程を管理する者としての2年以上の実務経験が必要です。

漁業分野の特定技能評価試験

2020年4月1日以降、特定技能評価試験の受験資格が拡大されました。これまでの中長期在留者に限らず、在留資格を有する者であれば誰でも受験が可能となりました。これにより、過去に中長期在留者として在留した経験がない方でも、短期滞在の在留資格を持って入国し、受験することが可能となりました。

漁業分野の特定技能1号の在留資格を取得するには、技能水準と日本語能力水準の両方に合格する必要があります。技能試験の合格は、日本での就労を保証するものではなく、別途日本語能力試験(N4以上)の合格も必要です。

最後は、漁業分野の特定技能評価試験について詳しく説明します。

受験資格

漁業技能測定試験(漁業)と漁業技能測定試験(養殖業)では、受験資格に違いがあります。漁業技能測定試験(漁業)の受験資格は、試験日に満18歳以上であり、日本国内で試験を受験する者は在留資格を有する者であることが必要です。一方、漁業技能測定試験(養殖業)の受験資格は、試験日に満17歳以上であり、日本国内で試験を受験する者は在留資格を有する者であることが必要です。

試験日程・場所

試験は日本全国および一部の国外で開催されています。詳細な日程や場所は公式ウェブサイトで確認できます。

試験内容

漁業技能測定試験(漁業)および漁業技能測定試験(養殖業)では、学科試験と実技試験が行われます。学科試験では、業務に関する知識や安全衛生に係る内容が出題され、実技試験では実際の作業能力が評価されます。

受験料

各試験の受験料はそれぞれ8,000円です。支払い方法として、クレジットカードやバウチャー、eウォレット(PayPay)が利用できます。

申し込み方法

漁業技能測定試験(漁業)および漁業技能測定試験(養殖業)の申し込みは、公式ウェブサイトから行うことができます。

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