「職場で人手が足りない。」「外国人雇用に興味はあるけど、どうすればいいのか分からない」「スキルのある外国人を雇いたい」このような悩みを抱えていませんか。在留資格「特定技能」は即戦力のある外国人材が日本で就労出来るように定められたものです。2023年6月には「特定技能2号」の対象範囲が11分野に拡大し、ますます注目を集めています。この記事では、特定技能の外国人の受け入れ機関になる際の注意点や求められる基準について詳しく解説していきます。特定技能についてよく分からないと言った方にも制度の仕組みから理解出来る内容となっています。
在留資格「特定技能」とは?
「特定技能」とは、2019年4月に新設された在留資格です。現在、日本は少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化しており、特定技能は外国人の就労を促進させる役割を担っています。ここでは、特定技能1号と特定技能2号の特徴の違いを詳しく解説します。
「【行政書士監修】特定技能とは?受け入れの際の注意点まで詳しく解説!」は、特定技能の制度や外国人採用を検討している企業向けの資料です。受け入れ可能業種の一覧、特定技能の外国人を受け入れる際の流れと義務、在留資格の取得方法を詳しく解説しています。最新の特定技能制度について知りたい方に最適です。ぜひダウンロードしてください。
特定技能1号の特徴
特定技能1号を活用することで、労働力を補うことが出来ます。日本における特定技能1号の登録者数は、2022年の時点で130,915 人であり、前年と比べて約50%増加しています。特定技能1号の特徴は以下の通りです。
①在留期間は上限5年
在留期間更新は、1年、6か月又は4か月ごとで行われ、通算で上限5年までです。特定技能1号ビザを保持したまま帰国した場合、帰国期間も特定技能1号の期間として計算されるため注意が必要です。
②日本語能力の証明が必要
特定技能1号では、「ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有する」必要があります。資格取得のためには、日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストの結果のいずれかを証明する必要があります。
③登録支援期間が必要
特定技能1号の外国人を雇用する際には、支援計画の作成を行い、雇用期間中は計画に基づいて外国人の労働環境や日本での生活の支援をする必要があります。支援体制の整備には登録支援機関に支援業務の委託も可能です。特定技能2号の外国人を雇用する際は、支援計画の作成は不要です。
特定技能2号の特徴
「特定技能2号」は、2023年より「介護」分野を覗く11分野に対象が拡大しました。今後対象分野の拡大によって取得者が更に増加すると考えられます。「特定技能2号」の特徴は主に3つあります。
① 在留期間上限無し
「特定技能1号」では通算5年までとなっていましたが、「特定技能2号」の場合は上限なく滞在することが可能です。この時、更新する必要があるため注意が必要ですが、更新し続ければ実質永住することが可能になります。
②高いスキルが求められる
「特定技能2号」は特定産業分野に対して「熟練した技能を要する業務」に従事することが出来ます。一般的に求められる技能水準は、各分野の技能検定1級を持っていることです。例えば、建設業では「1級鉄筋技能士」などが当たります。
③家族の帯同が認められる
「特定技能2号」では、「特定技能1号」や「技能実習」では認められなかった家族の帯同が可能になります。配偶者や子には、在留資格が付与されます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2022.12.19
特定技能1号と2号の違いとそれぞれの取得条件
働き手が不足している産業分野において、外国人労働者は貴重な労働力です。そのため、これまでの在留資格「技能実習」「技能」では、従事できなかった産業分野や業務でも外国人労働者が働けるように、「特定技能」という在留資格が創設されました。この特定技能には、特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。必要...
特定技能外国人受け入れ可能分野
特定技能外国人の受け入れ分野は、国内人材確保のための取組を行ってもなお、人材確保が困難な状況にある際に、外国人による人材確保を必要とする特定産業分野のことです。特定技能2号はもともと、建設分野及び造船・舶用工業分野の溶接区分のみが対象でしたが、2023年6月より「介護分野」以外の全ての特定産業分野において、受け入れが可能になりました。
特定技能1号
介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気 電子情報関連製造業、建設業、造船・舶用工業、自 動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造 業、外食業(全12分野)
特定技能2号
ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製 造業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、 農業、漁業、飲食料品製造業、外食業(全11分野)
(参考):製造業分野の特定技能2号追加について
「特定技能」と「技能実習」の違い
制度の目的
「特定技能」と「技能実習」の違いの一つとして制度の目的があげられます。「特定技能」は人材が足りていない業種に対して、労働力を補うために外国人を受け入れることを目的としています。一方で、「技能実習」はあくまで、「技術移転による国際貢献」を目的としています。そのため、特定の技術を必要としない単純作業や飲食業では受け入れが認められていません。また、「技能実習」は転職が認められておらず、「特定技能」の方が幅広く働くことが出来るという違いもあります。
受け入れ職種の違い
「特定技能」と「技能実習」は受け入れ職種や業務内容がそれぞれ違います。「特定技能」は12分野(14職種)、「技能実習」は85職種(156作業)あり、細かく分類されています。技能実習から特定技能の移行は、適正な条件を満たすことによって可能となりますが、職種によっては特定技能に含まれていないものもあるため注意が必要です。
受け入れ人数制限の有無
特定技能は、労働力不足を防ぐために導入されるものであることから、介護や建築分野以外において人数制限は設けられていません。一方で、技能実習は指導を目的としているため、企業の常勤職員の人数によって受け入れ人数が決められています。
特定技能取得要件
在留資格「特定技能」を取得するには、適切な試験を受験し、スキルの証明が必要です。試験は日本国内のみならず、海外からも受験をすることができます。資格取得に求められる試験について詳しく説明します。
日本語能力試験(JLPT)、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)の取得
在留資格「特定技能」を取得するためには「基本的な日本語を理解することが出来る」レベル以上が必要です。日本語力を証明する資格は主に日本語能力試験(JLPT)と国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)の2つがあります。日本語能力試験(JLPT)は、N1〜N5まで分かれています。N1が最も日本語力が高く、N5は日常生活レベルです。在留資格「特定技能」では、N4の取得が必要です。国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)は、受験レベルが1つのみで問題文が英語で書かれているという特徴があります。特定技能2号では、日本語能力試験は不要です。
2023.02.22
日本語能力試験(JLPT)を活用して、外国人採用の失敗を防ぐ方法
この記事を読むことで、外国人採用における日本語能力試験(JLPT)の活用について知ることができます。まず第一に、JLPTは外国人応募者の日本語スキルを評価し、採用の失敗を防ぐために重要なツールです。企業はJLPTのスコアを参考にして、応募者の日本語スキルを客観的に評価できます。 また、JLP...
技能評価試験
技能評価試験は、特定産業分野ごとによって異なります。現在最も需要の高い介護分野では、「介護技能評価試験」が行われます。試験はコンピューターで行われ、業務に直結した問題が出題されます。詳しくは各公式ウェブサイトにて確認してください。
「技能実習2号」から「特定技能1号」へ移行
技能実習2号を良好に修了した場合、関連のある業務に従事する時に限り、特定技能評価試験が免除されます。「特定技能1号」の在留資格を試験なしで取得するためには、技能実習に2年10ヵ月以上従事し、技能実習生に関する評価調書の書面が必要です。
特定技能外国人を受け入れるためには
特定技能外国人を受け入れるためには、企業側も一定の基準を満たす必要があります。ここでは、受け入れ機関に求められる必要事項について詳しく説明します。
受け入れ機関に求められる基準
受け入れ機関は法令の遵守だけでなく、特定技能外国人が安心して働けるために受け入れ基準が設けられています。
・労働,社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
(参考):法務省 新たな外国人材受け入れに関する政省令の骨子
・ 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
・ 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
・ 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がない等)に該当しないこと
・ 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
・ 中長期在留者の受入れ又は管理を適正に行った実績があり,かつ,役職員の中から,支援責任者及び支援担当者を選任していること(兼任可) 等
・ 外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有し ていること
・ 支援責任者等が欠格事由に該当しないことなど
受け入れ機関に必要な支援体制
受け入れ機関には、外国人を支援する体制を整えることが求められます。具体的な支援体制基準は以下の通りです。
- ①過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。以下同じ。)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり,かつ、役職員の中から、支援責任者及び支援担当者(事業所ごとに1名以上。以下同じ。)を選任して いること(支援責任者と支援担当者は兼任可。以下同じ)
②役職員で過去2年間に中長期在留者の生活相談等に従事した経験を有するものの中から,支援責任 者及び支援担当者を選任していること
①又は②と同程度に支援業務を適正に実施することができる者で,役職員の中から,支援責任者及び 支援担当者を選任していること
(参考):法務省 新たな外国人材受け入れに関する政省令の骨子
- 外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していること
- 支援状況に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
- 支援責任者及び支援担当者が,支援計画の中立な実施を行うことができ,かつ,欠格事由に該当しな いこと
- 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
- 支援責任者又は支援担当者が,外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施する ことができる体制を有していること
- 分野に特有の基準に適合すること
特定技能雇用契約に必要な書類
特定技能の外国人を雇用するためには、「特定技能雇用契約書」、「雇用条件書」が必要です。「特定技能雇用契約書」の参考様式はこちらです。
(参考):在留資格「特定技能」に関する参考様式(新様式) | 出入国在留管理庁
外国人受け入れ企業が気を付けるべきこと
1号特定技能外国人への支援は義務
受け入れ企業は、当該1号特定技能外国人が日本で働き、暮らしていく上で必要な支援を行うことが義務付けられています。支援の管理監督には、直属の上司や担当者がなることは出来ません。
登録支援機関への委託が必須な場合
会社に人事部がない場合や、適切な支援体制を整えられない場合は、登録支援機関に委託する必要があります。また、直近2年間に外国人労働者の受け入れ実績がない場合も支援を委託しなければなりません。支援実施体制、計画づくりといった条件を満たすことが出来る場合にのみ自社で支援を行うことが出来ます。自社で支援を行える条件が揃っている場合も、一部を委託をすることも出来るので、会社にとって最適な手段を選択しましょう。
出入国在留管理局への届出
特定技能外国人を受け入れた後は、出入国在留管理局へ各種届出を行う必要があります。これは、特定技能外国人への「適正支援」の一つである、「定期的な面談・行政機関への通報」も含みます。特に、雇用条件が変更した場合や、特定技能外国人の居住地が変更した場合などは、変更日から14日以内に出入国在留管理局へ届出をする必要があります。期間を過ぎてしまった場合、罰金や過料等の制裁があり、在留資格審査にも影響が出るため注意が必要です。
まとめ
特定技能外国人の受け入れは、人材不足を補う手立てになります。 受け入れ機関になるための必要書類や支援制度をしっかりと把握して、適切に対応しましょう。