2022年度における介護福祉士の国家資格を持つ外国人労働者が、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度比で5倍以上増加しています。介護分野の人材不足が深刻で、外国人の協力が欠かせない状況です。政府は2017年に介護資格を持つ外国人への在留資格を新設し、家族同伴や永住が可能となりました。特にベトナム人が増加の主力で、専門学校で学ぶ外国人留学生や技能実習生も貢献しています。しかし、高齢化が進む中国との介護人材争奪戦も激化。厚生労働省は今後の課題を分析し、労働環境や日本語対応に取り組む計画です。
2022年度において、介護福祉士の国家資格を持つ外国人労働者の数は約6,900人となり、新型コロナウイルス感染症の拡大が本格化する前の2019年度の5倍以上に増加していることが、出入国在留管理庁などの調査によって明らかになりました。介護分野での人手不足が深刻化しており、外国人労働者の協力が必要不可欠です。このため厚生労働省は、今年度中に受け入れに関する課題を調査する予定です。
政府は2017年に在留資格「介護」を新設し、介護福祉士の資格を持つ外国人労働者は、在留期間の更新回数の制限が撤廃され、事実上永住が可能となり、家族も同伴できるようになりました。
調査によると、国内で働く外国人介護福祉士の数は、2017年度には約400人でしたが、2019年度には約1,300人、2022年度には約6,900人と急増しています。国籍別では、ベトナム人が全体の約40%を占めています。
この急増の一因は、専門学校などで介護を学ぶ外国人留学生の存在です。彼らは入学者の約30%を占めており、新型コロナ禍でも帰国せずに学業を続け、合格しているケースがあります。
また、介護分野で働く外国人技能実習生も、国家試験の受験要件である「3年以上の労働・研修」を満たし、合格するケースが増えています。有資格者は手当が支給される施設が多く、資格取得後に日本での働く意欲が高まっています。
一方、高齢化に伴い介護需要が増加する中国なども、介護人材の国際的な争奪戦が激化しています。厚生労働省は今年度、外国人介護福祉士に関する実態調査を行う予定です。労働環境や日本語によるコミュニケーションの課題を分析し、将来の人材確保に向けた対策を講じる必要があると考えています。
龍谷大学短期大学部の伊藤優子教授(社会福祉学)は、「日本語の筆記が苦手な外国人のために、介護記録を母国語でタブレット端末を使用して入力できるようにするなど、国は外国人労働者が働きやすい環境整備を更に推進すべきです」と指摘しています。
※「介護福祉士」は高齢者や障害者の介護技術を持つ専門職で、登録者は約188万人(2023年3月現在)です。国家試験ではコミュニケーション技術や認知症に関する知識も問われます。