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外国人向け日本語教室が「空白地域」で44%、学べぬ外国人14万人の課題

外国人向けの日本語教室が存在しない「空白地域」が全市区町村の44%を占め、学べない外国人は14万9千人に上ります。新型コロナの入国制限緩和により外国人材の来日が拡大する中、必要な日本語力を身につける環境は依然として不十分です。この課題に対し文化庁が取り組みを進めていますが、地方では指導者確保が課題となっています。また、教室の多くはボランティアによって支えられており、さらなる支援が求められています。日本社会への適応を図るためにも、包括的な環境整備が必要とされています。

2022年11月時点で、全市区町村の44%にあたる「空白地域」には外国籍住民が通える日本語教室がないことが文化庁の集計で明らかになりました。前年から2ポイント改善しましたが、依然として空白地域には14万9千人の外国人が住んでいます。新型コロナウイルスの入国制限が緩和され、外国人材の来日が再拡大している一方で、仕事や生活に必要な日本語力を身につけるための環境整備が不十分な状況です。

静岡県長泉町の担当者は、「日本語を話せないと地域で孤立しがちになる。外国人の増加が見込まれるなか、これ以上放置できない」と述べ、9月に初めて日本語教室を開設する計画を明らかにしています。

空白地域のうち、留学生向けの大学や日本語学校以外の日本語教室を行政が把握できていないのは834市区町村(全1896市区町村・行政区を含む)です。これは前年より43市区町村減少したものの、依然として空白地域に住む外国人は14万9千人で、22年6月末時点の在留外国人(296万人)の5%に相当します。

空白地域の割合が高いのは沖縄(93%)、北海道(80%)、鳥取(79%)、青森(78%)などですが、兵庫(0%)、大阪(7%)、愛知(13%)、神奈川(14%)などでは低い傾向が見られます。

文化庁は26年度末までに空白地域を4割未満にする目標を掲げており、そのためには専門家の派遣や教室開設を支援する計画です。ただし、大都市部には多くの大学や日本語学校が存在し、日本語教師が集中している一方で、地方では指導者確保が難しいという課題もあります。

教室で指導する教師(ボランティアを除く)は全国で5500人ですが、そのうち4割強の2400人が東京に集中しています。また、教師1人当たりの学習者数は最多の栃木が78.8人、茨城も78.6人であり、東京の5.0人と大きな差があることも明らかになりました。

地方では教室が存在していてもボランティアが学びの場を支えているケースが全国的に見られます。特に茨城や埼玉などの11府県では指導者の8割がボランティアである割合を超えています。

新潟市にある「いろはにほん語教室」では、週1回の日本語授業に10〜50代の外国人約10人が集まり、東南アジアや中国出身の学生たちが福祉や介護を勉強しています。研修を受けたボランティアが一対一で、レベルに応じた会話や読み書きの指導に当たっています。

長谷川実さんは新潟市や近隣の自治体でボランティアの育成にも取り組んでおり、「受講を希望する外国人は増えているが、教える側の人材の確保が追いつかない」と説明しています。

22年11月には文化審議会国語分科会が外国人労働者やその家族向けの日本語教育に関し、中級程度の習熟度を目標に1〜2年のコースで体系的な教育を求める意見を公表しました。これにより、従来は来日間もない人を対象に必要最低限の時間数しか用意していなかった教室の指導体制が大幅に強化されることが期待されます。

しかし、教室開設を求められる自治体側は財政事情が厳しい現状もあり、「現実的でない」との声も上がっています。

人手不足の深刻化により、政府は外国人の受け入れ拡大や定着促進に取り組んでいます。製造業や農業、漁業などで働く人向けの在留資格「特定技能」の対象分野が、長期就労や家族帯同が可能な「2号」に11分野拡大されることが決定しています。また、専門学校の留学生が専攻と同じ分野での就職に限定される規制も今秋に大幅に緩和される予定です。

新型コロナウイルスの入国制限が緩和されて以降、外国人材の来日が増加していますが、言葉の壁により安定した職に就けなかったり、行政サービスや医療を十分に受けられない状況が続いています。これでは「選ばれる国」にはなり得ません。外国人労働力を受け入れるだけでなく、日本社会に適応できるような環境整備が不可欠です。

岩手大学の松岡洋子教授(日本語教育)は、「人口数千人の小規模自治体でも教室開設は難しいところもあるだろう。対面指導にこだわるのではなく、オンライン教育の活用など広く学習機会の確保を進めるべきだ」と提案しています。また、外国人向けの日本語習得を促進するために、一定程度の日本語力を在留資格取得の要件にするなどのインセンティブを検討すべきだとの意見も述べています。

地域の日本語教室は日本語の教育だけでなく、地域住民との交流や困りごとの相談、就労支援の窓口としても重要な役割を果たしています。こうした機能を提供するためには、外国出身者と地域社会が接触・交流する包括的な場を設け、その中に日本語学習を位置付けることが有益だと考えられます。

(参考)日本語教室「空白地域」なお44% 学べぬ外国人14万人 – 日本経済新聞

YOLO総研 編集部 リコピン

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YOLO総研 編集部 リコピン

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