「特定技能」と「技能実習制度」は、どちらも日本の労働市場への外国人労働者の受け入れを規定したものですが、滞在期間や受け入れ業種など様々な違いがあります。この記事では、2つの制度の違いについて徹底解説していきます!
目的の違い
技能実習制度の目的
・技能実習制度は、主に発展途上国からの技能実習生を受け入れ、彼らに日本の技術、知識、技能を習得させることを目的としています。
・技能実習生は、日本の技術やノウハウを学び、帰国後に自国での経済発展に貢献することが期待されています。
・主要な焦点は、技能の習得と技術移転にあります。
特定技能制度の目的
・特定技能制度は、日本の労働力不足を解消し、特に一定の職種や分野での労働力を補うことを目的としています。
・特定技能1号は、技能実習2号または3号を修了した人、または特定の試験に合格した人を対象とし、基本的な労働力を提供することを意味します。
・特定技能2号は、より高度な技術や経験を持つ人を受け入れ、高度な専門職に特化した労働力不足を解消することを目的としています。
・主要な焦点は、労働力の確保と職種別のスキルセットにあります。
(出典)「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省
労働期間の違い
技能実習制度と特定技能制度の労働期間において、特定技能1号と技能実習2号・3号の滞在期間は同様で最大5年ですが、特定技能2号は制限なく働けるため、労働期間の違いが存在します。
技能実習制度の労働期間
・技能実習生の滞在期間は最大で5年です。
・最初の1年間は「技能実習1号」として、基本的な技術や知識を学びます。
・その後、最大で4年間(合計5年間)、「技能実習2号・3号」として、より高度な技術を学びます。
特定技能の労働期間
・特定技能の一つである「特定技能1号」は、技能実習制度と同様に最大5年滞在することができます。
・特定技能1号は、技能実習2号・3号を修了した人、または特定の試験に合格した人が対象となります。
・特定技能2号を取得した場合、期間の制限なく働くことができます。
受け入れ事業数の違い
技能実習生受け入れ事業
技能実習制度は、技術を伝えることを目的としているため、特定技能よりも受け入れ業種が制限されており、企業の常勤職員総数によって受け入れ可能人数が定められています。転職は出来ません。
常勤職員総数 | 技能実習受け入れ可能人数 |
301人~ | 常勤職員総数の20分の1 |
201人~300人 | 15人 |
101人~200人 | 10人 |
51人~100人 | 6人 |
41人~50人 | 5人 |
31人~40人 | 4人 |
~30人 | 3人 |
特定技能受け入れ事業
特定技能は、人手不足を補うことを目的としているため、技能実習制度よりも広範な14業種で受け入れられています。さらに、特定技能は受け入れ人数の制限がなく、同一分野または、その業界に適した技能評価試験に合格していれば転職ができます。
管轄省庁 | 業種 | 受入見込み数(令和4年8月30日時点) |
---|---|---|
厚生労働省 | 介護 | 50,900人 |
ビルクリーニング | 20,000人 | |
経済産業省 | 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 | 49,750人 |
国土交通省 | 建設 | 34,000人 |
造船・舶用工業 | 11,000人 | |
自動車整備 | 6,500人 | |
航空 | 1,300人 | |
宿泊 | 11,200人 | |
農林水産省 | 農業 | 36,500人 |
漁業 | 6,300人 | |
飲食料品製造業 | 87,200人 | |
外食業 | 30,500人 |
監理団体/組合と登録支援機関の違い
監理団体/組合は技能実習生と受け入れ企業をサポートし、技能実習制度に関与します。一方、登録支援機関は特定技能外国人と特定技能所属機関を支援し、特定技能制度に関連する支援を提供します。
(1)目的
・技能実習制度の監理団体/組合は、技能実習生の支援を主な目的としています。彼らは技能実習生の受け入れ企業と協力して、技能実習生の受け入れ調整や手続きを行います。
・特定技能の登録支援機関は、特定技能外国人の支援を目的とし、彼らが日本での活動を安全かつ円滑に行えるようにサポートします。主に書類作成などの支援を提供します。
(2)対象
・技能実習制度の監理団体/組合は、技能実習生と受け入れ企業を支援します。
・特定技能の登録支援機関は、特定技能外国人を雇用する企業(特定技能所属機関)から委託を受けて、特定技能外国人の支援を行います。
(3)役割
・監理団体/組合は、技能実習生の受け入れ企業と技能実習生の間で調整やサポートを提供し、技能実習生の受け入れを円滑に進める役割を果たします。
・登録支援機関は、特定技能外国人のために書類作成や手続きの代行、日本での生活の支援など、特定技能1号の活動をサポートし、円滑な適用を保つ役割を担います。
(4)制度における位置づけ
・監理団体/組合は技能実習制度において、技能実習生の受け入れと関連する支援活動に関与します。
・登録支援機関は特定技能制度において、特定技能外国人の支援と関連する支援活動を担当します。
監理団体/組合(技能実習制度)
監理団体は技能実習生の支援を目的としています。主に、技能実習生の受け入れを検討する企業の要望に応え、技能実習生の受け入れ調整や各種手続きを行っています。監理団体は、中小企業連携組織や事業協同組合等の営利を目的としない団体であり、主務大臣によって認められた非営利団体です。技能実習生の受け入れ方法は、「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。「企業単独型」は企業や団体が、独自のルートで現地法人や海外取引先とつながり技能実習生を受け入れます。一方で、「団体監理型」による技能実習生を受け入れるケースは監理団体による支援やサポートが必須となっています。
登録支援機関(特定技能)
登録支援機関とは、特定技能1号が、日本での活動を安全に円滑に行えるようにするために、在留期間における支援計画の作成、実施を行う機関のことです。特定技能外国人の支援は、主に書類作成などがあげられます。専門的な知識が必要とされる書類手続きにおいて、登録支援機関が、特定技能外国人を雇用する企業から委託される形で代行を行います。また、特定技能外国人を雇用する企業のことは、特定技能所属機関と呼ばれます。
登録支援機関が必ず実施しなければならない支援としては主に10種類あります。詳しくは、事前ガイダンス、出入国する際の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援、生活オリエンテーションの実施、公的手続きの動向、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援、定期的な面談・行政機関への通報があげられます。他にも任意的支援として、住居の確保などがあります。
受け入れ機関(企業側)の注意点の違い
特定技能企業は法令遵守や特定支援機関の選定に注意を払い、技能実習企業は支援機関との連携やサポートに重点を置く点が異なります。
特定技能で受け入れる企業の注意点
・法令の詳細を確認し義務事項を順守することが重要です。具体的には、労働保険や社会保険などへの適切な登録が求められます。
・悪質な紹介業者の介入を防ぐために、特定技能所属機関は慎重に選定する必要があります。
・特定支援に書類作成などの業務を委託する場合、対応可能な言語、所在地、委託費用を検討しましょう。
・外国人労働者とのコミュニケーションが円滑に行えるよう、言語スキルを確認し、言語に合わせた対応を心掛けることが大切です。
技能実習制度で受け入れる企業の注意点
・登録支援機関は支援業務をビジネスとして提供しているため、業務委託の費用は企業によって異なります。支援業務内容と費用について理解しましょう。
・就業開始後も特定技能外国人がスムーズに活躍し続けられるよう、支援機関との連携やサポートに配慮することが大切です。
特定技能で受け入れる企業
特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関が留意すべきポイントは、法令の詳細を確認し義務事項を順守することと、悪質な紹介業者の介入を防ぐことの2つです。法令の順守において、特定技能所属機関は労働保険や社会保険などへの適切な登録が求められます。
専門的な書類作成を特定支援に委託する場合、対応可能な言語、所在地、委託費用を検討する必要があります。対応可能な言語では、外国人が理解できる言語でコミュニケーションを取ることが必要です。従って、自社で雇う外国人の言語スキルを業務委託前に確認することが重要です。
技能実習制度で受け入れる企業
また、登録支援機関はビジネスとして支援業務を提供しているため、業務委託の費用は会社によって異なります。支援業務の違いを理解し、就業開始後も特定技能外国人が円滑に活躍し続けられるように配慮することが大切です。
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まとめ
外国人労働者自身や受け入れる企業にとって、技能実習制度と特定技能の違いを理解することは最適な選択肢であるかを判断するための重要です。制度の詳細や適用可能性を個々の状況やニーズと照らし合わせて、適切な制度を選択しましょう。