短期間日本に滞在することができる短期滞在ビザを知っていますか?滞在の期限が決まっているため比較的簡単に認められるビザですが、他のビザと違い更新ができないなどの特徴を持ちます。今回はそんな短期滞在ビザについて基本情報から注意点、申請方法などについて詳しく解説します。
短期滞在ビザとは
そもそも短期滞在ビザとは具体的にどのようなビザでしょうか。短期滞在ビザとは、観光や親族の訪問などの活動をするために、短期間の在留を許可するビザです。短期滞在ビザには2種類あり、ビジネス目的で申請する際は「商用」、それ以外は「その他の短期滞在」で申請します。
まずはその基本情報である
・短期滞在ビザで出来る活動
・例外的に報酬を受け取れる短期滞在
・短期滞在ビザで在留することのできる期間
・短期滞在ビザ免除国
について解説していきます。
短期滞在ビザで出来る活動
1.娯楽や観光、参詣または通貨を目的とする滞在
2.保養や手術などの治療が目的である滞在
※入院治療の期間によってビザが異なります。
90日以内:短期滞在 91日以上:特定活動
3.アマチュアとしてコンテストや大会などの協議に参加するための滞在
※報酬を受けてはなりません。
4.知人や友人、親戚に訪問するための滞在
5.冠婚葬祭に出席するための滞在
6.工場などの見学や視察に行くための滞在
7.講義や説明会への参加のための滞在
※講義する側の場合は報酬を受けてはなりません。主催者から渡航費や滞在費を得ることは問題ありません。
8.会合への参加
※日本の法人で経営者(役員)として出席する場合は、「短期滞在」ではなく在留資格「経営・管理」に該当します。海外の親会社からの報酬であっても、日本での活動に対して対価が支払われる場合は「経営・管理」に当てはまります。
9.日本に出張し、業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査それらの短期商用の活動をするための滞在
10.日本の大学受験や弁護士試験などのために手続きするための滞在
11.日本に訪れる国公賓やスポーツ選手の取材活動のための滞在
12.報酬を受けずに学業の一環として行う実習(インターン)
13.その他の収入を伴う事業を運営する、もしくは報酬を得ずに短期関する滞在
例外的に報酬を受け取れる短期滞在
短期滞在は基本的に報酬を受け取れません。しかし、一定の条件を満たすことで報酬を受け取れます。
・講演や講義、討論などの活動での謝礼金
・助言や鑑定などの活動での謝礼金
・小説や絵画などの著作物の制作活動
・イベントや映画、テレビ番組への参加活動
など
短期滞在ビザの在留期間
短期滞在ビザで在留できる期間は3種類あります。
・15日
・30日
・90日
上記の3つの期間から自分で希望の在留期間を選べます。しかし、長く滞在すればするほど審査の基準は難しくなるため注意が必要です。
短期滞在ビザの免除ができる国
短期滞在ビザを免除することができる国と出来ない国があります。2023年10月現在、以下の70の国と地域に対してビザの免除をしています。一部の国や地域では免除制度に制限があるため注意が必要です。
アジア
- インドネシア
2014年以降のビザ免除対象は以下の要件を満たした方のみです。
・ICAO(国際民間航空機関)標準のIC旅券を持っている
・インドネシアにある日本の在外公館(大使館・総領事館・領事事務所)において旅券の事前登録をしている - シンガポール
- タイ
2022年11月1日以降は、ICAOと呼ばれる国際民間航空機関のIC旅券を持っている方のみ(15日以内) - マレーシア
2013年7月1日以降は、ICAOと呼ばれる国際民間航空機関のIC旅券を持っている方のみ
事前にビザを取得せずに入国する場合、日本入国時に厳格な入国審査が行われ、結果として入国できないおそれがあります。 - ブルネイ(14日以内)
- 韓国
- 台湾
身分証番号が記載された台湾護照(旅券)を所持する方のみ - 香港
身分証番号が記載された台湾護照(旅券)を所持する方のみ - マカオ
マカオ特別行政区旅券を所持する方のみ
欧州
- アイスランド
- アイルランド
6か月以内の滞在は認められていますが、90日を超えて滞在する場合には日本にいる間に在留期間更新手続きをしなければなりません。手続きは出入国在留管理庁にて行えます。 - アンドラ
- イタリア
- エストニア
- オーストリア
6か月以内の滞在は認められていますが、90日を超えて滞在する場合には日本にいる間に在留期間更新手続きをしなければなりません。手続きは出入国在留管理庁にて行えます。 - オランダ
- キプロス
- ギリシャ
- クロアチア
- サンマリノ
- スイス
6か月以内の滞在は認められていますが、90日を超えて滞在する場合には日本にいる間に在留期間更新手続きをしなければなりません。手続きは出入国在留管理庁にて行えます。 - スウェーデン
- スペイン
- スロバキア
- スロベニア
- セルビア
2011年5月1日以降は、ICAOと呼ばれる国際民間航空機関のIC旅券を持っている方のみ - チェコ
- デンマーク
- ドイツ
6か月以内の滞在は認められていますが、90日を超えて滞在する場合には日本にいる間に在留期間更新手続きをしなければなりません。手続きは出入国在留管理庁にて行えます。 - ノルウェー
- ハンガリー
- フィンランド
- フランス
- ブルガリア
- ベルギー
- ポーランド
- ポルトガル
- 北マケドニア
- マルタ
- モナコ
- ラトビア
- リトアニア
- リヒテンシュタイン
6か月以内の滞在は認められていますが、90日を超えて滞在する場合には日本にいる間に在留期間更新手続きをしなければなりません。手続きは出入国在留管理庁にて行えます。 - ルーマニア
- ルクセンブルク
- 英国
6か月以内の滞在は認められていますが、90日を超えて滞在する場合には日本にいる間に在留期間更新手続きをしなければなりません。手続きは出入国在留管理庁にて行えます。
太平洋
- オーストラリア
- ニュージーランド
中南米
- アルゼンチン
- ウルグアイ
- エルサルバドル
- グアテマラ
- コスタリカ
- スリナム
- チリ
- ドミニカ共和国
- バハマ
- バルバドス
2010年4月1日以降は、ICAO標準の機械読取式旅券(MRP:Machine-Readable Passport)を持っている方のみ
日本入国時に厳しい入国審査が行われるため、事前にビザを取得することをお勧めします。 - ブラジル
2023年9月30日以降は、ICAO(国際民間航空機関)標準のIC旅券を持っている方のみ - ホンジュラス
- メキシコ
6か月以内の滞在は認められていますが、90日を超えて滞在する場合には日本にいる間に在留期間更新手続きをしなければなりません。手続きは出入国在留管理庁にて行えます。
中東
- アラブ首長国連邦
2022年11月1日以降は、ICAO(国際民間航空機関)標準のIC旅券を持っている方のみ(30日以内) - イスラエル
- カタール
2023年4月2日以降のビザ免除対象は以下の要件を満たした方のみです。
・ICAOと呼ばれる国際民間航空機関のIC旅券を持っている
・カタールにある日本の在外公館(大使館・総領事館・領事事務所)において旅券の事前登録をしている - トルコ
2011年4月1日以降は、ICAO標準の機械読取式旅券(MRP:Machine-Readable Passport)を持っている方のみ。日本入国時に厳しい入国審査が行われるため、事前にビザを取得することをお勧めします。
アフリカ
- チュニジア
- モーリシャス
- レソト
2010年4月1日以降は、ICAO標準の機械読取式旅券(MRP:Machine-Readable Passport)を持っている方のみ。日本入国時に厳しい入国審査が行われるため、事前にビザを取得することをお勧めします。 - ペルー
1995年7月15日以降はビザ取得を勧める制度を導入しています。日本入国時に厳しい入国審査が行われるため、事前にビザを取得することをお勧めします。 - コロンビア
2004年2月1日以降はビザ取得を勧める制度を導入しています。日本入国時に厳しい入国審査が行われるため、事前にビザを取得することをお勧めします。
参考:外務省‐ビザ‐ビザ免除国・地域(短期滞在)
短期滞在ビザの注意点
ビザの変更、更新は原則できない
短期滞在ビザにて入国した際は最長の在留期間である90日を超えた滞在や、それに伴う在留資格の変更は原則できません。そのため、更に日本に滞在を希望する場合は一度帰国して再度手続きをする必要があります。しかし、日本在留中に在留資格認定証明書交付申請して許可された場合は在留資格を変更し滞在できます。しかし、短期滞在ビザは期限があることを前提としているため、厳しい審査基準をクリアし、「やむを得ない特別の事情に基づくものであること。」でなければなりません。
短期滞在ビザは何回も使えるものではない
短期滞在ビザを何度も使うことで結果的に長期間滞在するという方法は使えません。比較的簡単にビザが取れるという理由から、短期滞在ビザを用いて日本に長く滞在することは一見可能なように見えます。しかし、短期滞在ビザには「180日ルール」というものが存在し、1年に180日以上は滞在できません。法律上はそのようなルールはありませんが、実務上180日以上は滞在できないという暗黙のルールが存在します。「やむを得ない特別の事情に基づくものであること。」でない限り申請が許可される可能性は低いです。
報酬を受ける活動ができない
上記でも触れましたが、短期滞在ビザは商用で申請した場合であっても報酬を受ける活動ができません。
しかし、下記の2点に該当していれば上記の「例外的に報酬を受け取れる短期滞在」のように報酬を受け取ることができます。
・日本国外で行われる主な業務に関連して、従たる業務を短期間で行う場合
・業として行うものではない臨時の報酬
短期滞在ビザで報酬を受け取る就労が可能かについては、こちらでも詳しく解説しています。
2023.05.23
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申請は渡航前に大使館・領事館で
短期滞在ビザで日本に渡航する場合は、渡航前に海外の日本国大使館や日本国領事館で主に申請者本人が申請します。そのため、日本国内の大使館や領事館にて招へい側の人間のみで申請することはできません。
詳しい申請の流れや条件については、この後解説していきます。
短期滞在ビザの流れ
短期滞在ビザの申請は、
・日本国へ渡航する側の申請人
・日本国内への招へい人
両方ともがそれぞれ手続きをする必要があります。具体的な手順の紹介後、手続きに必要な書類、審査の条件や審査が通らない具体的な例まで解説します。
短期滞在ビザの申請方法
・日本国へ渡航する側の申請人
1.日本へ渡航する計画を立てる
2.必要書類をそろえる
3.現在在住している地域の日本大使館又は総領事館で申請する
4.申請終了後、旅券を取りに行く
5.査証が発給された場合3か月以内に入国する
・日本国内への招へい人
1.外国籍の方を日本に招く計画を立てる
2.必要書類の準備をする
3.必要書類を申請人にメールか郵送いずれかにて送付する
※申請人の「3.移住地の最寄りの大使館又は総領事館等で申請する」時点にて書類が必要になるのでそれまでに送付する必要があります。
短期滞在ビザの必要書類
必要書類も日本国へ渡航する側の申請人と日本国内への招へい人とでそれぞれ異なりますので分けて解説します。
・日本国へ渡航する側の申請人
1.旅券
2.査証申請書
3.写真
4.その他の必要書類
・日本国内への招へい人
1.招へい理由書
2.滞在予定表
3.身元保証書
4.その他の必要書類
※どちらの場合も必要書類は申請人の国籍や渡航目的等によって異なりますので必ずその国の大使館や領事館のホームページを確認しましょう。
査証申請書とは:
日本に事前に申請し、入国の許可を得るための書類です。ビザ申請書とも呼ばれます。
招へい理由書とは:
招へいするにあたっての目的や、経緯を記載した推薦状のようなものです。日本国内への招へい人が作成し、申請人とどのような関係なのかについても記載します。
滞在予定表とは:
滞在するうえでの目的に沿って、入国日や出国日、滞在期間中の旅程などを記載します。あくまで予定ですので、完全に確定した旅程でなくても大丈夫です。
身元保証書とは:
身元保証書とは日本に来る外国人の身元を保証する人物について記載する書類です。保証人の氏名や住所、職業などの個人情報を記載します。
その他の書類:
その他にも渡航元の国や渡航する目的によって必要な書類があります。ここでは一部の必要な書類を紹介します。実際にどのような書類が必要になるかは大使館や領事館にて確認するようにしましょう。
目的:結婚式の参加
必要書類:結婚式があることを証明する結婚式場の予約証明書
目的:入院や手術
必要書類:医師の診断書
目的:商用(韓国からの場合)
必要書類:在職証明書
短期滞在ビザの審査条件
短期滞在ビザの発給には審査があります。短期滞在ビザ発給の条件としては以下のようなことがあげられます。
・日本に来る外国人が過去に犯罪を起こしていないかどうか
・日本に呼び寄せる会社が信頼に値する会社であるか
・滞在の目的が明確で、認められている活動内容に当てはまるか
・滞在の日程、予定が明確であるかどうか
・身元保証人によって滞在費、帰国旅費、法令の順守の3点が保障されているかどうか
上記のような条件をクリア出来ていない場合は審査に通らない可能性もあります。また、申請が通らなかった理由は教えてもらえません。具体的な条件や不発給の理由を教えると、悪用して入国しようとするケースが増えると考えられているからです。法律でもこれらの情報の開示義務は無いと定められているため、不発給になってしまった場合は対策が難しくなっています。そして、一度不発給になると同じ理由での再申請するためには6ヶ月待たなければなりませんので注意しましょう。
短期滞在ビザの申請ができない具体例
では、申請が通らない理由として考えられるものは具体的にどのようなものなのでしょうか。具体的に解説していきます。
身元保証人に金銭的サポートができるほどの年収がない
短期滞在ビザの身元保証人になる場合は、だいたい年収300万円以上・貯金100万円以上が必要とされています。この金額はあくまでも目安です。貯蓄が極端に少ない場合や、年収が極端に少ない場合など安定した生活が遅れていないと判断された場合は許可されないケースがあります。
希望日数と目的が一致しない
例えば滞在希望日数が最長である90日で申請し、目的を商用の会議参加や冠婚葬祭などの短期で終わるもので申請してしまうと短期滞在ビザは発給されません。本当にこの目的のみのために90日間の滞在が必要かと不審に思われるでしょう。審査官から整合性があると思われることが大切です。
申請人と招へいする人の関係性が不透明
申請が通らない場合によくありがちなのが、申請人と招へいする人の関係性が不透明な場合です。関係性を単なる友人や知人などと記載するのではなく、どういった経緯で出会ったのかや共通の所属先などを詳しく記載しましょう。
短期滞在ビザの更新(延長)
短期滞在ビザの注意点でも解説しましたが、短期滞在ビザはやむを得ない事情がないビザの更新や、延長はできません。更新するためには、
1.滞在を延長した場合の費用が支払えること
2.在留期間中に犯罪や不正をしておらず、善良な人と判断できること
3.やむを得ない理由が説明できること
短期滞在ビザの更新(延長)の必要書類
短期滞在ビザをやむを得ない理由で更新(延長)する際は以下の5つの書類が必要です。
・在留期間更新許可書類
・短期滞在ビザを延長する理由書
・理由書の理由を証明できるもの
・入国後の活動を説明できる資料
・延長滞在中や帰国にあたっての費用を支払えることを証明できる資料
短期滞在ビザの更新(延長)理由の例
ケース1
理由:日本在留中に大きな事故にあい緊急で入院することになったため
必要書類:「すぐに入院して手術などの治療をしなければならない。」と判断したことが分かる書類
ケース2
理由:両親を介護するために来日後、状態が悪化して引き続き介護がどうしても必要になってしまったため
必要書類:引き続き介護が必要であることを証明する
ケース3
理由:帰国するための航空機が出ておらず物理的に困難なため
必要書類:航空機が出ていないことを証明する書類
まとめ
今回は短期滞在ビザの注意点や手続きの流れ、更新する際の方法について詳しく解説しました。短期滞在ビザは100%取得出来るわけではありませんが比較的簡単に取得できます。しかし、短期滞在ビザは何度も使えない点や日本ではなく外国の大使館や領事館での申請が必要な点など注意が必要です。また、基本的に更新することはできませんが、やむを得ない理由で更新する際は理由書などの提出が求められます。今回解説したこれらの情報をもとに短期滞在ビザを活用しましょう。