外国人採用を検討している方の中には、「不法就労助長罪」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?不法就労助長罪とは、外国人に向けて不法就労を助長したり、斡旋したりする行為のことです。
外国人の方を採用したいと思われている企業の方は、「不法就労助長罪」が問われる条件や防止する方法について十分理解することが大切です。
当記事では「不法就労助長罪」の基礎的な知識を簡単に紹介しながら、概要や罪となる条件、罪に問われないために取り組むべき対策を紹介しています。
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不法就労助長罪って?
不法就労助長は、外国人に向けて不法就労を助長したり、斡旋したりする行為のことです。不法就労罪とは別で、独立して処罰が課せられるものであり、もちろん日本人も処罰対象です。
罰則として300万円以下の罰金、または3年以下の懲役あるいは禁固の刑が課せられます。
法人であれば罰金刑が課せられ、外国人の場合は退去強制とされてしまいます。
一方で不法就労とは、日本において外国人が許可なく労働することであり、国や地域の法律により労働が認められていない人や、在留資格を所有していない人が法律を無視して労働することです。
参考:厚生労働省 東京労働局
- 我が国に不法に入国・上陸したり、在留期間を超えて不法に残留したりするなどして、正規の在留資格を持たない外国人が行う収入を伴う活動
- 正規の在留資格を持っている外国人でも、許可を受けずに、与えられた在留資格以外の収入を伴うじぎょうを運営する活動又は報酬を受ける活動
不法就労について詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
2023.06.14
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働いている外国人の方が、不法就労罪に該当する場合と、事業主が不法就労助長罪に問われるかは、別の問題となります。
理由は、不法就労助長罪というのは、外国人に対し不法就労活動を行わせることですので、事業主の指示に従わずに外国人が自らの判断により不法就労活動を行った際は、該当しないからです。
しかし、雇用している側が不法就労と認識していない場合においても、知らなかったとして過失があると判断され不法就労助長罪に問われるため注意しましょう。
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不法就労助長罪となる例
不法就労助長罪となる例は、主に以下3つです。
日本に滞在する資格がない者を雇用する場合
雇用した外国人の方が、不法残留者や不法入国者に該当する場合、雇用している側に不法就労助長罪が問われます。
滞在する資格がない外国人は、原則母国に帰国する必要があるため、日本で働く権利も当然ありません。
そのような人材を雇用し労働させた場合、不法就労助長罪となります。
労働することが認められていない者を雇用する場合
観光もしくは知人を訪問する目的で日本を訪れた外国人が日本で雇用する場合や、家族滞在・留学生の在留資格を持っている外国人が「資格外活動許可」を保持せずに、アルバイトとして採用する場合などが該当します。
例え、滞在する権利がある外国人でも、労働するには労働するための許可が必要です。
労働が認められている範囲外で雇用する場合
就業可能範囲や時間を超えて労働させた場合も、不法就労助長罪の対象です。
就労許可があればすべての業務に従事できる訳ではありません。
就業可能な範囲外と知っているにもかかわらず雇用した場合はもちろん、仮に知らない場合でも罰せられてしまいます。不法就労した本人だけでなく、企業にも罰が課せられるため注意しましょう。
また、「資格外活動許可」や「指定書」を持っていても、定められた範囲外で雇用した場合は不法就労になりますので注意して下さい。
不法就労助長罪にならないよう企業が取り組むべき事項
不法就労助長罪にならないよう企業が取り組むべき事項は、以下5つです。
専門家を活用する
1つ目の事項は、専門家を活用することです。
在留資格を持っている方であれば、基本的に就労可能と思われている方も多いですが、定められている活動内容と逸脱した労働を行った場合には、不法就労活動に該当します。
また、取得しているビザの種類次第では、パスポートを確認する必要やアルバイトにおける時間管理を徹底する必要があります。
ここで重要になるのは、在留資格を得られたかということではなく、外国人材に対しどのように雇用して管理するのかです。
在留資格を持っていた場合でも、企業でその後に外国人材を管理する方法次第では、不法就労を問われてしまう可能性もあり、それ次第では不法就労助長罪となってしまう可能性があります。
外国人材を雇用する際は、国際業務に対し専門的な知識を所有する専門家に相談するのも有効な手段でしょう。
専門家に相談したい場合は、弁護士や行政書士への相談がおすすめです。
法律における専門家から力を借りられるため、安心して外国人労働者を雇用できます。
パスポート・在留カードの原本確認を行う
2つ目の事項は、パスポート・在留カードの原本確認を行うことです。
必ず雇用前(採用前)には、「就労が認められた在留資格か確認すること」が必要です。
就労可能な在留資格を瞬時に判断できる方法はこちらで解説しています。
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「資格外活動許可欄」が必要な在留資格は、在留資格(留学・家族滞在)で該当しない収入が発生する事業に取り組む際やその報酬を得る際に必要となる許可のことです。
表面に「就労不可」と記載されている方の場合でも、裏面に記載されている「資格外活動許可欄」で次の以下のいずれかが記載されている方は就労が可能です。
しかし、就労する場所や時間に関しては制限されていますので、注意して下さい。
- 資格外活動許可書に書かれている許可された範囲の中での労働
- 許可を受けている(原則として週28時間を超えず、風俗営業などの従事以外)
- に関しては、資格外活動の許可書をチェックして下さい。
- に関しては、アルバイト先が複数ある際には、すべてのアルバイト先の合計の労働時間が週に28時間を超えていない必要があります。
「資格外活動」について詳しく知りたい方はこちらをご参考にしてください。
また、在留資格の種類(特定技能・特定活動・技能実習など)によってはパスポートにある「指定書」が必要になるため、パスポートの確認もお願いします。
在留カードが有効なものか確認を行う
3つ目の事項は、在留カードが有効なものか確認を行うことです。
入管により提供されている出入国在留管理庁の公式サイトから、在留カードや特別永住者証明書における番号が有効なものか確認が可能です。
偽造カードかを見分ける方法は、行政管理士が監修する資料で確認できます。
入管法について正しく理解する
4つ目の事項は、入管法について正しく理解することです。
前述しましたが、外国人が所有する在留資格に関しては、活動の類型別にカテゴリーが分けられています。所有しているビザで行える活動範囲をしっかりと把握していないと、労働内容が法定内なのか法定外なのか判断することは不可能です。
法定外の労働を行い報酬を受け取ってしまうのは、不法就労活動と判断されてしまうため、外国人を雇う際には、入管法について正しく理解する必要があります。
入管法について正しく知りたい方は、こちらの記事で解説しています。
2022.12.19
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ハローワークに届け出る
5つ目の事項は、ハローワークに届け出ることです。
外国人を雇おうと思っている事業主の方は、雇用対策法で定められている「外国人雇用状況の届出」を行うことが義務のため、外国人を雇う際や外国人の従業員が離職した際には、ハローワークに届け出なければなりません。
届け出る事項には、在留期間や在留資格、外国人労働者の氏名などがあります。
外国人を雇っている企業は、定められている期限で届出を出さなければならず、届出を出さなかった場合、30万円以下の罰金が課せられてしまいます。
届出対象に定められている外国人は、原則としてすべての外国人労働者ですが、「公用」「外交」「特別永住者」に該当する方の在留期間は例外です。
届出を提出する方法は、インターネット上で申請することも、窓口で提出することもできます。
なお、この届出を提出する際には、入国管理局に届出を提出する必要はありません。
こちらの記事で詳しく紹介していますので、気になる方は確認してみて下さい。
2022.12.13
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不法就労助長罪による検挙事例
不法就労助長罪による検挙事例を2つ紹介します。
暴力団員の入管法違反
暴力団組員が、平成30年の9月〜31年1月の間、技術・人文知識・国際業務における在留資格を取得しているバングラデシュ人に対し解体工事現場などの単純労働を行わせていた事例です。
バングラデシュ人を雇っていた暴力団組員の日本人男性2人が不法就労助長罪で、また、バングラデシュ人を無許可活動による違反で逮捕されました。
人材派遣会社における経営者の入管法違反
人材派遣会社を経営している日本人男性が、平成30年の7月~令和元年の5月の間、技能実習の在留資格により入国していたベトナム人女性らに対し、プラスチック部品検査工場で労働させていた事例です。
令和元年5月にベトナム人を雇っていた経営者を不法就労助長罪で、作業員として労働していたベトナム人女性3人を不法残留の罪で逮捕しました。
まとめ
今回は、不法就労助長罪について解説しました。
不法就労助長罪とは、外国人に向けて不法就労を助長したり、あっせんしたりする行為のことです。
不法就労助長罪となる例には、日本に滞在する資格がない場合や認められないまま労働する場合、認められている範囲外で労働する場合があります。
また、不法就労助長罪にならないよう企業が取り組むべき事項には、専門家を活用したり、在留カードが有効なものか確認を行ったりすることがあります。
外国人を雇用しようと考えている企業の方は、不法就労助長罪について十分に理解する必要がありますので、しっかりと理解しておきましょう。