イギリス出身者の採用および選考プロセスにおいて、「イギリスの学歴は!?」「この大学の評判は!?」「この教育機関の学位は大学と同等!?」など、疑問を抱えることはありませんか?
この記事では、このような疑問を抱える人事および採用担当者の方々に向けて、イギリスの大学ランキング、教育制度、イギリス人の就職事情に関する情報を紹介しています。
イギリスの基本情報
イギリスの大学ランキングや就職事情の前に、まずは、イギリスという国の基本情報を見ていきましょう。
首都・都市・人口
イギリス(United Kingdom、略称:UK)は、ヨーロッパの北西部に位置する国で、正式には「イギリス連邦(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」と呼ばれています。
首都はロンドン(London)で、地理的にはグレートブリテン島とアイルランド島の北東部に位置し、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという4つの地域から構成されています。
2022年の推定人口は約6,700万人です。
公用語
公用語は英語ですが、スコットランドではスコットランド・ゲール語とスコットランド語、ウェールズではウェールズ語も話されています。
政治体制
政治体制は君主制立憲(monarchy)で、チャールズ3世が2023年12月時点で現君主です。政府は議会制立憲君主国で、議会は二院制で構成されており、下院(庶民院)と上院(貴族院)があります。
経済・文化
貨単位は英ポンド(GBP)で、イギリスは世界有数の経済大国として金融、サービス、製造業など多くの産業が発展しています。特にロンドンは国際的な金融センターとして知られ、シティ・オブ・ロンドンがその中心地です。
文化面では、イギリスは文学、音楽、映画、演劇など多彩な文化活動の発展地として知られており、多くの著名な作家や音楽家が輩出しています。伝統的な要素から現代的な要素までが結びついており、多様性が特徴です。
イギリスの教育制度の特徴
ここからは、一般的なイギリスの教育制度の特徴についてみていきましょう。
学年暦
イギリス(イングランド)の学年暦は、通常、9月から翌年の6月までの期間をカバーしています。この期間内に学校の学年がスタートし、終了します。この体系により、学生は年度ごとに進級し、新しい学年に移行します。
就学前教育(3歳から4歳)
イギリスでは、就学前教育が3歳から4歳の幼児を対象に提供されています。
これは、保育学校、学校に併設された保育学級、プレスクールなどで行われます。幼児期の基本的な教育を提供し、社会的スキルや基本的な知識の習得を支援します。
在籍率は、約78%で、幼少期から教育への接触が始まります。
義務教育(5歳から16歳)
イギリスの義務教育は5歳から16歳までの11年間に及びます。
これは基本的な学校教育を受けるための必須期間であり、その後の16歳から18歳までの2年間は、教育または訓練を継続することが求められます。
これにより、幅広い教育機会が提供され、学生は基本的な学習スキルを獲得し、その後の進路に備えます。
初等教育(6年間)
初等教育は通常、小学校で提供され、6年間のプログラムをカバーします。
これは基本的な学科(数学、科学、言語など)に加えて、基本的なコミュニケーションスキルや社会的なスキルを強化する役割を果たします。在籍率は約109%で、教育へのアクセスが高いことを示しています。
中等教育(7年間)
イギリスでは中等教育は中学校および高校で提供され、通常は7年間にわたります。
無選抜の中等学校(コンプリヘンシブ)が主流ですが、地域によっては「ファーストスクール」「ミドルスクール」「アッパースクール」と3段階に分かれていることもあります。
中等学校には2年間のシックスフォームが付属しており、高等教育への準備を行います。シックスフォームでは、高度な学科を選択し、大学入学資格を取得するための準備を行います。
高等教育
高等教育は主に大学で提供されますが、継続教育カレッジでもプログラムが提供されています。
在籍率は約57%で、学士課程、修士課程、博士課程など多くの学位プログラムが用意されています。これにより、学生は専門的な知識とスキルを獲得し、自身のキャリアや職業への道を選択できます。
学位と資格
イギリスの学校教育において、主な学位と資格には、GCSE(中等教育修了一般資格)とGCE・A(基本的な大学入学資格レベル)が含まれます。これらの資格は学生が大学進学やキャリアのスタートに必要な基盤を提供します。また、継続教育カレッジでは、職業資格も提供され、実務経験を積む機会も提供されます。
教育行政
イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの地域から成り立っており、それぞれの地域には教育を監督する政府機関が存在します。
イングランドでは、教育省(DFE)が中央にあり、国の教育制度を統括し、学校監査を行う教育水準局(OFSTED)なども存在します。地方当局(LA)は学校の設置と維持を担当し、地域に合わせた教育プログラムを提供します。
イギリスと日本の教育制度の共通点
イギリスと日本の教育制度にはいくつかの共通点があります。ここからは、その共通点について詳しく紹介していきます。
学年制度
イギリスと日本の学校教育は、学年制度を採用しています。学生は毎年進級し、学業を進めるため、学年ごとにクラスが編成されています。また、学年暦も似ており、通常は9月から始まり、翌年の6月までの期間をカバーします。
高等教育機関
イギリスと日本の両国には、高等教育機関が存在し、学生は大学へ進学する機会があります。大学で学士課程、修士課程、博士課程などの学位を取得できます。高等教育は職業訓練や専門教育も含み、学生が専門知識とスキルを習得できる場でもあります。
イギリスと日本の教育制度の違い
一方で、両国の教育制度にはいくつかの違いもあります。ここからは、その違いを紹介していきます。
就学前教育
イギリスでは、就学前教育が幅広く提供され、3歳から4歳の幼児を対象に保育学校、学校に併設された保育学級、プレスクールなどで行われます。
一方、日本では就学前の教育は義務化されておらず、保育所や幼稚園などで提供されることが一般的ですが、必須ではありません。
初等教育の長さ
イギリスでは、初等教育は通常6年間で、小学校で提供され、その後に中等教育が続きます。
対照的に、日本の基本的な義務教育は9年間で、小学校(6年制)と中学校(3年制)で提供されます。その後、高等
学校制度の組織
イギリスでは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの地域で教育制度が異なり、各地域が独自の教育政策、カリキュラム、評価方法を採用しています。
対照的に、日本の教育制度は国全体で統一されており、全国で共通のカリキュラムと評価方法が適用され、地域ごとの大きな差異はありません。
学校年齢の義務化
イギリスでは、16歳から18歳までの2年間、教育または訓練が義務付けられており、これは「シックスフォーム」として知られています。これは高等教育への準備を行う期間です。
一方、日本では16歳から高等学校へ進学することが一般的ですが、特定の年齢までの教育義務はありません。高校進学は選択肢の一つであり、進学率は高いですが、学年齢での義務化はありません。
教育システムの評価方法
イギリスでは、GCSE(中等教育修了一般資格)やGCE・A(基本的な大学入学資格レベル)などの資格試験が一般的で、学業の成績が大学入学資格に影響します。
対照的に、日本では大学入試が主流であり、高校生活全体の成績や大学入試センター試験の結果が大学入学に影響します。
イギリスの大学ランキング(TOP20)
異なるランキングソースのデータを参考にして、イギリスの大学を総合的に評価した「YOLO WORK」独自のイギリス大学ランキングを紹介していきます。
1位:オックスフォード大学 (University of Oxford)
2位:ケンブリッジ大学 (University of Cambridge)
3位:インペリアルカレッジロンドン (Imperial College London)
4位:ロンドンスクールオブエコノミクスアンドポリティカルサイエンス (London School of Economics and Political Science)
5位:エディンバラ大学 (University of Edinburgh)
6位:キングスカレッジロンドン (King’s College London)
7位:マンチェスター大学 (University of Manchester)
8位:ウォーリック大学 (University of Warwick)
9位:ブリストル大学 (University of Bristol)
10位:グラスゴー大学 (University of Glasgow)
11位:バーミンガム大学 (University of Birmingham)
12位:ダラム大学 (Durham University)
13位:サウサンプトン大学 (University of Southampton)
14位:ヨーク大学 (University of York)
15位:ランカスター大学 (Lancaster University)
16位:ノッティンガム大学 (University of Nottingham)
17位:リーズ大学 (University of Leeds)
18位:サセックス大学 (University of Sussex)
19位:リバプール大学 (University of Liverpool)
20位:エクセター大学 (University of Exeter)
それでは、ここからは各大学の特徴を簡単に紹介していきます。
1位:オックスフォード大学 (University of Oxford)
オックスフォード大学は世界でもっとも有名な大学のひとつで、800年以上の歴史を持ちます。イギリスでも最も伝統的で優れた大学とされ、幅広い学術分野において優れた評判を持っています。特に人文科学、自然科学、社会科学の分野で優れた研究を行っています。オックスフォード大学はカレッジ制度を採用しており、38のカレッジと6つの永続私立ホールから成り立っています。
2位:ケンブリッジ大学 (University of Cambridge)
ケンブリッジ大学もオックスフォード大学同様、非常に歴史のある名門大学です。オックスフォードと並び「オックスブリッジ」として知られ、世界中から優秀な学生と研究者を引き寄せています。ケンブリッジ大学は多くのノーベル賞受賞者を輩出し、科学、工学、文学、哲学など多岐にわたる分野で卓越した研究を行っています。
3位:インペリアルカレッジロンドン (Imperial College London)
インペリアルカレッジロンドンは、特に科学、工学、医学の分野で優れた評判を持つ大学です。ロンドンに位置し、世界的に競争力のある大学として知られています。イノベーションと起業家精神を奨励し、多くの起業家や技術者を輩出しています。
4位:ロンドンスクールオブエコノミクスアンドポリティカルサイエンス (London School of Economics and Political Science)
ロンドンスクールオブエコノミクスアンドポリティカルサイエンスは社会科学の分野で国際的に高い評価を受ける大学で、経済学、政治学、社会学、国際関係学などの分野で優れた研究と教育を提供しています。国際的な学生と教員のコミュニティを持ち、政策立案や社会変革に影響を与えています。
5位:エディンバラ大学 (University of Edinburgh)
エディンバラ大学はスコットランドの首都エディンバラに位置する大学で、19世紀に設立されました。医学、科学、人文科学、社会科学など多くの分野で高い評価を受けています。エディンバラ自体が文化的な中心地であり、大学もその文化と歴史に貢献しています。
6位:キングスカレッジロンドン (King’s College London)
キングスカレッジロンドンはロンドンに位置し、医学、法学、文学、人文科学など幅広い分野で高い評価を受けています。特に医学研究と心理学の分野で優れた評判があります。大学はロンドンの文化的な魅力に囲まれています。
7位:マンチェスター大学 (University of Manchester)
マンチェスター大学は産業革命の中心地であり、科学、工学、ビジネス、人文科学など多岐にわたる分野で研究と教育を提供しています。大学は世界中の大企業と協力し、研究と産業界との連携を強化しています。
8位:ウォーリック大学 (University of Warwick)
ウォーリック大学は、イギリスのミッドランド地域に位置し、ビジネス、経済学、科学、工学、文学など幅広い分野で評価されています。特に経営学と経済学が優れた評判を持っており、国際的な学生と教員のコミュニティを育成しています。
9位:ブリストル大学 (University of Bristol)
ブリストル大学は西部イングランドに位置し、工学、生命科学、医学、人文科学などで高い評価を受けています。ブリストルはイギリスでも美しい都市のひとつであり、大学はその文化と歴史に根ざしています。
10位:グラスゴー大学 (University of Glasgow)
グラスゴー大学はスコットランドのグラスゴーに位置し、多くの分野で高い評価を受けています。医学、工学、科学、社会科学などで卓越した研究を行い、学生に国際的な視野を提供しています。
11位:バーミンガム大学 (University of Birmingham)
バーミンガム大学はイギリスで最も大きなキャンパスのひとつを持ち、多くの学生に幅広い学術プログラムを提供しています。特にビジネス、工学、医学、社会科学の分野で評価が高く、地域社会との協力にも重点を置いています。
12位:ダラム大学 (Durham University)
ダラム大学は美しい歴史的なキャンパスとして知られており、特に文学、歴史、科学の分野で評価が高いです。大学のカレッジ制度は学生に独自のコミュニティとサポートを提供し、学問と文化活動の豊かな環境を提供しています。
13位:サウサンプトン大学 (University of Southampton)
サウサンプトン大学は海洋学、工学、健康科学、社会科学などの分野で高い評価を受けており、研究と産業連携に注力しています。海に近い立地を生かし、海洋環境研究にも力を入れています。
14位:ヨーク大学 (University of York)
ヨーク大学は美しいキャンパスと高品質の研究プログラムで知られています。特に文学、歴史、科学、経済学の分野で評価が高く、学際的なアプローチを奨励しています。
15位:ランカスター大学 (Lancaster University)
ランカスター大学は青々としたキャンパスと先進的な教育環境を提供しており、特に経営学、工学、社会科学、芸術と人文科学の分野で強みを持っています。学生の国際的な経験をサポートしています。
16位:ノッティンガム大学 (University of Nottingham)
ノッティンガム大学はキャンパスをイギリス内外に展開し、多くの学術分野で高い評価を受けています。特にビジネス、医学、工学、社会科学などで卓越した研究と教育を提供しており、国際性豊かな環境で学生を育てています。
17位:リーズ大学 (University of Leeds)
リーズ大学は、多様な学問分野で高い評価を受けており、特にビジネス、工学、医学、社会科学の分野で優れた研究を行っています。学生はキャリア準備やリーダーシップスキルの獲得に重点を置くことができます。
18位:サセックス大学 (University of Sussex)
サセックス大学は、革新的なアプローチで知られており、特に生命科学、社会科学、工学、文学の分野で高い評価を受けています。国際的な研究プロジェクトに参加し、学際的な協力を奨励しています。
19位:リバプール大学 (University of Liverpool)
リバプール大学は医学、工学、ビジネス、社会科学など幅広い分野で高い評価を受けており、リバプールの歴史的な都市環境を活かして学生に豊かな経験を提供しています。研究と産業連携も重要な要素です。
20位:エクセター大学 (University of Exeter)
エクセター大学は美しいキャンパスと高品質の教育を提供し、特にビジネス、人文科学、社会科学、自然科学の分野で優れた評判を持っています。海沿いに位置し、環境持続可能性にも注力しています。
イギリスの就職事情
最後は、イギリスの就職事情について、紹介していきます。
イギリスの働き方と特徴
イギリスの就職事情は多様で、外国で働く機会が豊富です。レストランでの給仕係、通訳、日本語教師、オフィスワークなど、多くの職種が存在します。イギリス人は、仕事とプライベートをはっきりと区別し、労働時間の制約が厳格です。残業は少なく、オンとオフの切り替えが得意です。しかし、イギリスはヨーロッパ諸国の中でも比較的残業が長い国として知られており、1週間の平均労働時間は日本よりもやや少ない程度です。
また、イギリスでは、仕事に関するルールや規則が重要視され、臨機応変な対応はあまり行われません。自分の業務範囲外のことにはあまり干渉しない傾向があります。終業時間やお昼休憩になると、多くの場合、従業員は定時に帰宅し、オフィスワーカーが深夜や週末にメールに対応することはほとんどありません。このように、イギリスでは仕事とプライベートのメリハリをつけることが一般的です。
雇用と転職
イギリスでは終身雇用制度は一般的ではなく、多くの人が転職を経験します。キャリアアップを図るために転職が一般的であり、自分の能力や経験を武器に新たな仕事を探すことが一般的です。日本と異なり、大学を卒業したばかりの学生でも大企業に直接就職することは難しく、小規模な企業からスタートしてキャリアを積み上げていくことが一般的です。また、起業家精神も盛んで、大学のキャリアセンターで起業支援が行われていることもあります。
休暇とワークライフバランス
イギリスでは有給休暇や長期休暇が権利として認められており、休暇取得は当然の権利とされています。休みをしっかり取り、プライベートと仕事を分けることが奨励されており、上司も休暇を取ることに対して理解があります。休暇中の仕事への対応が少ないため、休みを満喫する文化が根付いています。長期休暇をまとめて取得することが一般的であり、休暇取得に罪悪感を感じることはほとんどありません。