コラム

特定技能「飲食料品製造業」における外国人雇用のメリットや業務区分、注意点について解説

人材不足の解決策として、外国人労働者の受け入れを検討している方もおられるかもしれません。飲食料品製造業において、特定技能の新たな制度が導入され、これにより外国人労働者の受け入れが以前よりもスムーズになりました。しかし、具体的な手続きや条件はどのようなものなのか、それを詳しく解説いたします。飲食料品製造業における特定技能受け入れの具体的なステップについてご紹介します。

飲食料品製造業における特定技能受け入れ

そもそも特定技能とは?

特定技能とは、人手不足が深刻な業界において、外国人が単純労働を行うための制度です。この特定技能制度は2019年に導入されましたが、以前は外国人労働者にとってビザ取得が難しいルールが適用されていました。

しかし、日本において人材不足が深刻化し、外国人が重要な労働力となることから、特定技能制度が緩和されることとなりました。

特定技能制度は14の分野に分かれており、その中には飲食料品製造業も含まれています。2017年のデータによれば、全産業の有効求人倍率が平均1.54倍であるのに対し、飲食料品製造業の有効求人倍率は2.78倍と高くなっています。このため、企業が求人を出しても応募者が集まらず、人手不足が深刻な問題となっています。

こうした状況から、外国人労働者を受け入れやすくするために、飲食料品製造業の特定技能制度が導入されたのです。

特定技能における「飲食料品製造業」業種分類・業務区分

特定技能における「飲食料品製造業」の具体的な業種は、総務省の「日本標準産業分類」において、以下の分類を主要な業務として行っている事業所が該当します。

・中分類 09 食料品製造業
 ・小分類 101 清涼飲料製造業
 ・小分類 103 茶・コーヒー製造業(清涼飲料製造業を除く)
 ・小分類 104 製氷業
  ・細分類 5861 菓子小売業(製造と小売を含む)
  ・細分類 5863 パン小売業(製造と小売を含む)
  ・細分類 5897 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業(*製造と小売を限定)

食品や飲料(酒類を除く)を製造・加工し、卸売りする事業所がこれに該当します。具体的には、畜産食品、水産食品、缶詰、漬物、調味料、パン、菓子、めん類、冷凍食品、惣菜、清涼飲料、茶・コーヒーなどの製造業が含まれます。また、製造と小売を一体的に行っている菓子・パン製造小売、豆腐・かまぼこ等加工食品小売業も対象となります。

ただし、酒類製造業、飲食料品小売業(細分類5861、 5863、 5897を除く)、飲食料品卸売業、塩製造業、医療品製造業、香料製造業、およびペットフードの製造は、特定技能の対象外となります。

(参考)総務省|統計基準等|日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-分類項目名

「飲食料品製造業」で特定技能外国人に注目が集まる理由

特定技能と「飲食料品製造業」についての理解の上で、なぜ特定技能外国人の雇用に注目が集まっているのかを考察してみましょう。

ここでは、主要な2つの理由、「①技能実習からの移行が増加していること」と「②6次産業化により、農業事業者の採用も増加していること」について詳しく説明します。

①技能実習からの移行が増加

新型コロナウイルスの感染拡大により、技能実習で来日した外国人は、実習期間終了後に帰国できない状況が発生しました。その結果、多くの元技能実習生が在留資格を特定技能に変更し、日本での労働を希望しています。

同様に、技能実習生を受け入れる企業も新しい実習生を受け入れることが難しくなり、現在研修中の技能実習生を特定技能として雇用したいという需要が存在します。この背景から、コロナ禍以前から特定技能で働いていた外国人労働者に加え、技能実習からの移行者が増加し、飲食料品製造業における外国人労働者が急増しています。

一方、企業側の採用が活発化している理由は、技能実習からの移行者が既に日本語や日本での生活に慣れ、高品質な外国人労働者を比較的低い初期投資で雇用できることが挙げられます。特定技能では技能実習では許可されていない転職も可能であり、これが外国人労働者の需要を促進しています。

技能実習との違いは?

技能実習と特定技能の主な違いは何でしょうか?最大の違いは、特定技能では単純労働を含む幅広い業務を遂行できる点です。

技能実習は業務範囲が限定的であり、繁忙期に他の業務を担当することが難しい場合があります。特定技能も特定の分野に制限はありますが、技能実習よりも幅広い業務をこなせる能力が求められます。

さらに、現在は国内在住の技能実習生が特定技能への在留資格変更を選ぶことが増加しており、彼らは日本での生活に慣れ、日本語能力が高く、同じ分野での経験も豊富です。彼らは即戦力として活躍できる可能性が高く、新たに来日した技能実習生とは大きく異なる要因となっています。

②6次産業化により、農業事業者の採用も増加

6次産業化とは、農業、工業、商業の1次産業、2次産業、3次産業を統合し、生産者が加工や流通も行えるようにする概念です。これにより、従来、農産物の生産に専念していた農業事業者が、加工品の製造や販売も行うことが可能となり、様々なメリットがもたらされています。

農業事業者の収入増加や地域振興などが期待されている6次産業化ですが、一方で多くの業務を担当する必要があるため、多才な労働力の需要が高まっています。

この背景から、農業事業者の間では外国人労働者の採用が増加しており、特定技能「飲食料品製造業」に対する需要が高まっている一因と言えるでしょう。

農業分野では以前から技能実習制度を通じた外国人労働者の受け入れが行われてきましたが、技能実習生の担当業務は限定的であり、多様な作業を委託することが難しかったのが現実でした。一方、多種多様な農産物の加工を行う場合、季節によって必要とされる作業内容が異なることもあるため、特定技能「飲食料品製造業」を選択することで、より多様な業務を効率的にこなす外国人労働者を採用できる可能性が高まっています。

特定技能「飲食料品製造業」受け入れの流れ  class=

受入れ企業(外国人労働者を雇用する企業)の要件

受入れ企業(外国人労働者を雇用する企業)は、特定技能所属機関と呼ばれ、外国人労働者と直接雇用契約を結ぶ企業のことです。つまり、外国人労働者を募集・採用し雇用する企業となります。

特定技能所属機関の条件

特定技能所属機関には、以下の条件が課せられています。

ア:特定技能所属機関は、「食品産業特定技能協議会」と呼ばれる団体に加入する必要があります。この協議会は、農林水産省、関連業界団体、登録支援機関、その他関係者から構成されています。
イ:特定技能所属機関は、協議会に対して必要な協力を提供しなければなりません。
ウ:特定技能所属機関は、農林水産省又はその委託を受けた者によって実施される調査などに協力しなければなりません。
エ:特定技能所属機関が1号特定技能外国人支援計画の実施を登録支援機関に委託する場合、上記のア、イ、ウの条件をすべて満たす協議会の構成員である必要があり、さらに農林水産省や協議会に対して必要な協力を提供しなければなりません。

なお、特定技能所属機関ごとの受け入れ人数には制限がなく、特定技能「飲食料品製造」については制限がないことに注意してください。

特定技能人材の雇用形態(直接雇用のみ)

特定技能人材の雇用形態は、直接雇用のみが認められており、派遣雇用は許可されていません。

報酬(日本人と同等の報酬)

特定技能外国人に支払う報酬は、日本人と同等の水準である必要があります。外国人であるからといって報酬を低くすることはできません。報酬については能力に応じて調整することも可能ですが、最低限の報酬水準を確保することが求められます。

また、外国人労働者を雇用する前に、受け入れ企業は「特定技能外国人の報酬が日本人の報酬と同等以上であることの説明文書」を作成し、外国人労働者に提示しなければなりません。日本人に適用される賃金規定がある場合は、それを適用することとされています。賃金規定がない場合や、日本人が働いていない職場の場合は、同様な業界での報酬が参考になります。

特定技能外国人の受け入れメリット

ここからは、特定技能外国人を受け入れることの代表的なメリットを2つ紹介します。

①即戦力としての活用

特定技能の在留資格を取得するためには、外国人個人が各分野での技能水準試験に合格する必要があります。これらの試験は、即戦力としての知識や技術を問うものです。

2022年2月の製造分野技能試験では、合格率はジャンルにかかわらず20%以下でした。高い技術水準と知識を持つ合格者が多かったことが示されています。特定技能に指定された分野では、外国人労働者を雇用することで人手不足を解消する可能性があります。特に、特定技能外国人の中には20代の若手労働者が多く、若手人材の採用も期待できます。例えば、介護分野の特定技能外国人のうち、18~29歳の割合は約70%に達します。人手不足の解消だけでなく、若い才能を活かす機会があるでしょう。

②長期間の雇用の見込み(技能実習→特定技能1号→特定技能2号)

特定技能外国人は、一部の分野を除いて直接雇用が基本です。また、フルタイムの雇用も可能です。これにより、日本人従業員と同等の働きを期待できます。特定技能外国人は転職が認められていますが、転職は技能資格を持つ分野内でのみ許可されています。そのため、頻繁な転職は滅多に行われません。

さらに、技能実習からの継続雇用も可能です。特定技能外国人を雇用する際、海外在住者に限らず、技能実習生として受け入れることもできます。また、すでに雇用している技能実習生を特定技能外国人として継続的に雇用することも可能です。ただし、外国人本人は特定技能の要件を満たす必要があります。技能実習から特定技能への移行に際しては、技能実習の「良好な修了」が技能試験と日本語試験の免除条件となります。さらに、2022年6月現在、建設分野と造船・舶用工業分野では、特定技能2号への移行が認められており、特定技能2号では在留期間の制限がないため、長期の雇用が可能です。

特定技能外国人を受け入れる際の注意点

次に、特定技能外国人を受け入れる際の代表的な注意点を2つ紹介します。

①手続きの複雑さ

特定技能外国人を受け入れるためには、手続きが煩雑です。出入国在留管理庁への申請に加えて、分野によっては外国人の母国機関との連絡や調整が求められます。手続きの複雑さが課題となる場合、登録支援機関の協力を検討することが重要です。

また、特定技能1号の在留期間はどの分野でも制限があり、「最長5年」とされています。在留期間が満了すると、母国へ帰国するか、在留資格の変更手続きが必要です。継続的な雇用を希望する場合、外国人本人に在留資格変更の手続きを行う必要があります。

分野によっては特定技能2号への移行が可能ですが、事例はまだ限られています。在留資格の変更先としては、「技術・人文知識・国際業務ビザ」が考えられます。

②高い人材紹介料

人材紹介サービスを利用する場合、手数料が発生します。外国人の年収の2〜3割程度が一般的な手数料の相場とされています。採用に関連する費用が増加する可能性に留意が必要です。

特定技能「飲食料品製造業」の人材要件

まず最初に、特定技能の在留資格を取得する必要があります。在留資格の取得には、試験に合格することが不可欠です。飲食料品製造業においては、2つの試験に合格する必要があります。それは、「飲食料品製造業技能測定試験」と「日本語能力試験(N4以上)」です。技能実習2号を修了した外国人は、これらの試験を免除することができます。

在留資格を取得したら、次に外国人との雇用契約を締結します。飲食料品製造業では、特定技能外国人の派遣雇用は認められていないため、直接雇用する必要があります。雇用契約を締結した後は、外国人に事前ガイダンスの受講や健康診断を受けさせます。問題がなければ、地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書交付申請書」を提出します。この際、健康診断の診断書も提出が必要です。申請が難しい場合、行政書士などに代理申請してもらうこともできます。

審査に問題がなければ、「在留資格認定証明書」が交付されますが、受け入れる外国人は日本に入国する必要があるため、交付から3か月以内に注意して手続きを進めましょう。在留資格認定証明書は外国人に送付され、在外公館に提出し、査証の申請を行います。審査に合格すれば査証が発給され、外国人は日本に入国し、住民登録や給与口座の開設、住居の手配などの必要な手続きを行います。これらの手続きが完了したら、就労を開始する準備が整います。

特定技能「飲食料品製造業」受け入れ準備

特定技能「飲食料品製造業」の試験情報

国内試験に関する受験資格が、令和2年4月1日以降拡大されました。以前は、受験対象者は「中長期在留者及び過去に中長期在留者として在留していた経験を有する方」などに限られていましたが、現在は「在留資格を有する者」については一律に受験が認められるようになりました。このため、過去に中長期在留者として在留した経験がない方でも、受験を目的として「短期滞在」の在留資格で入国し、受験が可能となりました。

(参考)試験関係 | 出入国在留管理庁

試験概要

飲食料品製造業分野の特定技能1号の在留資格取得には、「技能水準」と「日本語能力水準」の両方に合格が必要です。

※特定技能の要件として、本試験とは別に、基本的な日本語能力を有することを確認するための国際交流基金 日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上の合格が必要です。
※本試験の合格は日本での就労を保証するものではありません。

受験資格

下記の①〜③の条件をすべて満たす必要があります。

① 在留資格を持っている方。
日本の法律を守って日本に在留している人は試験を受けることができます。在留カードを持っていない場合も、法律を守って日本に短期滞在している人は試験を受けることができます。不法残留者等は、試験を受けることができません。

② 試験日に満17歳以上の方。
インドネシア国籍の方は18歳以上。

③ 退去強制令書の円滑な執行に協力するため、法務大臣が告示で定める外国政府又は地域の権限ある機関が発行したパスポートを持っている方。
現在、イラン・イスラム共和国以外の外国政府・地域のパスポートを持っている方は試験を受けることができます。

試験日程・場所

試験日程や場所は、日本国内か海外(インドネシア・フィリピン)かによって異なります。

日本国内(2023年4月~2024年3月)
第一回
・マイページ登録の申請期限:4月26日23時59分
・試験申し込みの受付開始:5月9日10時
・試験日:6月12日~7月1日
・試験場所:北海道、宮城、茨城、埼玉、東京、石川、愛知、京都、大阪、広島、香川、福岡、宮崎、沖縄

第二回
・マイページ登録の申請期限:8月10日23時59分
・試験申し込みの受付開始:8月21日10時
・試験日:9月24日~10月19日
・試験場所:北海道、宮城、栃木、埼玉、東京、富山、愛知、京都、大阪、広島、愛媛、福岡、鹿児島

第三回
・マイページ登録の申請期限:11月17日23時59分
・試験申し込みの受付開始:食料品製造業11月27日10時
・試験日:2024年1月ごろ(予定)
・試験場所:北海道、宮城、茨城、埼玉、東京、愛知、大阪、兵庫、広島、香川、福岡、宮崎、沖縄

海外(2023年4月~2024年3月)
インドネシアとフィリピンで開催されています。
2023年11月に試験が予定されています。
詳しくは、OTAFF(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)のホームページをご確認ください。

試験内容

①学科試験
・問題数:30問
②実技試験
問題数:10問

試験時間:学科試験と実技試験を合わせて80分
出題形式:マークシート
実施方法:ペーパーテスト方式
合格基準:学科+実技で満点の65%以上

学習用テキスト:一般社団法人食品産業センターの公式サイトまたは、下記から無料でダウンロードできます。
・学習用テキスト(日本語) 第3版(2022年3月)
・学習用テキスト付属資料(日本語) 第2版(2022年3月)
・学習用テキスト用語集(日本語) 第2-2版(2022年3月)

受験料

8,000円(税込み)
※受験料の返還はできません。

申し込み方法

一般社団法人食品産業センター(OTAFF)の公式サイトからお申し込みください。

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