今後、さらに人材不足が加速すると考えられる外食業において、特定技能「外食」は1つの解決策として注目を集めています。しかし、特定技能「外食」を取得するためには日本語試験と技能試験を受けて合格する必要があります。今回は特定技能「外食」の試験に関する基本的な概要から試験の開催日程や場所、試験を申し込むまでの手順などについて具体的に解説していきます。
そもそも特定技能「外食」とは
特定技能「外食」とは、日本で深刻な労働力不足に直面している外食産業を支えるための、在留資格です。専門性と技能を持つ外国人労働者を対象としたこのビザは、国内の労働市場において即戦力となる人材を確保することを目的として、2019年4月に新設されました。
特定技能に関する内容は、こちらからご確認いただけます。
2023.10.06
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「【行政書士監修】特定技能とは?受け入れの際の注意点まで詳しく解説!」は、特定技能の制度や外国人採用を検討している企業向けの資料です。受け入れ可能業種の一覧、特定技能の外国人を受け入れる際の流れと義務、在留資格の取得方法を詳しく解説しています。最新の特定技能制度について知りたい方に最適です。ぜひダウンロードしてください。
農林水産省によると、外食業の人材不足は他の産業と比較して2倍以上に上り、国内での人材確保がとても困難になっています。また、新型コロナウイルスの影響で一時的に減少した求人は徐々に回復しつつあるものの、国内での人材不足は依然として深刻です。そのため、「特定技能」ビザの導入は、特に外食業の人材不足改善に大きな影響を与えると考えられています。
出入国管理庁の統計によれば、特定技能「外食」分野における外国人労働者の数は2021年12月時点で1985人にのぼります。また、新型コロナウイルスの影響が減少していく中で、これらの数字はさらに増加すると予想されています。特定技能1号ビザを持つ外国人は、最大5年間日本の外食産業で働けるため、この業界の厳しい人材不足の現状を変えることのできる選択肢として注目を集めています。
さらに詳しい情報やこのビザの取得条件については、こちらの記事でご確認いただけます。
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特定技能「外食」でできること
特定技能「外食」の試験について知る前に、まずこの資格の業務の内容について解説します。
・調理した飲食料品をその場所で提供する飲食店での業務
・お持ち帰りやデリバリーを専門とする店での業務
・消費者の求める場所で調理した飲食料品を提供する店での業務
・ファーストフード店、喫茶店、食堂、ケータリングサービス等での業務
・飲食物調理、接客、店舗管理の業務
・店舗において使用する原材料の生産や、調理品以外の物品販売等の関連業務
※特定技能「外食」では直接雇用される形を取り、フルタイムで働くことが求められます。
(ここでいうフルタイム労働とは、週に最低5日、年間217日以上勤務し、さらに週の労働時間が30時間を超えることを指します。)
特定技能「外食」でできないこと
一方、特定技能「外食」では出来ないことも存在します。具体的には以下の業務に従事することはできません。
・風俗営業や性風俗関連特殊営業を営む営業所での業務
・ホストやキャバクラといった1号営業での業務
・照度が低い場所での2号営業
・インターネットカフェなどの3号営業
・歓楽的雰囲気を醸し出す方法による接待
特定技能「外食」が2号へ拡大したことについて
令和5年から、以前は「特定技能1号」のみだった9分野(ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業)が新たに特定技能2号の対象に移行となりました。
その主な違いは就労可能な期間です。1号は上限が5年であるのに対して、2号の場合は上限がありません。この制度変更により、日本に長く滞在したいと考える外国人による「特定技能」の取得が増加すると考えられます。
詳しい特定技能1号と2号の違いについてはこちらの記事で解説しています。
2022.12.19
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特定技能「外食」の試験概要
外食業における特定技能の評価試験は、ー般社団法人外国人食品産業技能評価機構が実施しています。この試験は、一般に「外食業技能測定試験」として知られ、その内容は日本フードサービス協会が作成しています。この協会は1974年に設立され、800社以上の会員を擁する外食産業関連の最大規模の組織です。そのため、この試験内容は業界のスタンダードとして位置付けられています。
試験の範囲は、接客全般、飲食物調理、そして衛生管理の3つの科目から構成されており、それぞれの科目において日本の外食業界で必要とされる基本的な技能や知識が問われます。更に、筆記試験だけでなく、外国人の技能水準を総合的に評価するための実技試験も行われています。
外食業分野での特定技能1号の在留資格取得を目指す者は、「技能水準」と「日本語能力水準」の両方に合格する必要があります。技能水準の試験内でも日本語能力の測定はありますが、それとは別に国際交流基金の日本語基礎テストや日本語能力試験N4以上の合格も必要とされています。
日本語試験について
特定技能「外食」を取得するためには、今回解説している技能試験に加えて、日本語試験にも合格する必要があります。以下のどちらか1つに合格することで条件をクリアできます。
(1)国際交流基金日本語基礎テスト
(2)日本語能力試験(N4以上)
技能試験について
外食業に関する特定技能の評価試験は、日本の外食業界の実務経験を持つ者の知識と技能を深掘りする試験として位置付けられています。試験の水準、すなわち難易度については、日本の外食業界での実務経験が平均2年程度(1年から3年の範囲)の者を対象として設定されています。具体的には、この経験年数を持つ者が、試験専用の学習テキストなどの特別な準備をせずに試験を受験した場合、約50%の受験者が合格するような難易度に調整されています。これは、外食業界での一定の経験を持つ者が、その知識と技能を正確に評価されることを意味しています。
受験資格
・年齢要件:試験日に17歳以上の人
・在留資格:日本の法律に従い、在留カードがあるか、法的に短期滞在している人
・パスポート要件: 法務大臣が定める国または地域の発行したパスポートを持っている(イラン・イスラム共和国を除く)
・国籍制限:なし(どの国の人も17歳以上であれば受験可能)
・学歴要件:不問(大学や専門学校の卒業は必要ない)
試験費用と持ち物
支払い
・受験料:7,000円(税込)
・支払方法:クレジットカード、コンビニエンスストア決済、ペイジー(口座振替)から選択
・返金ポリシー:受験料は基本的に返金されませんが、OTAFFの都合や試験災害で試験が中止となった場合は例外として返金されます。
持ち物
・受験票:OTAFFからの指示に従い、マイページからダウンロードし、印刷(カラー/モノクロ)するか、デジタルで提示。
・本人確認書類:(以下のいずれか一つ)
(1)出入国在留管理庁の在留申請オンラインシステムからの申請受理メールを印刷したものと在留カードのカラーコピー(表と裏)
(2)在留カード更新手続のための預かり書
・筆記用具:鉛筆またはシャープペンシル、消しゴム。
・時計:試験中の時間管理用。
詳しくは受験票にて記載されていますので、試験当日までに確認しておきましょう。
合否について
・合格ライン: 満点の65%以上の得点を合格とします。
・合格発表のタイミング: 試験終了後、3週間以内にOTAFFの公式ホームページとマイページにて公開されます。
・合格証書について:合格後、マイページから合格証書をダウンロードできます。印刷は受験者自身が行う必要があります。
・有効期限: 合格証書の有効期限は発行日から10年間です。
・利用目的: 合格証書は、日本の在留資格認定証明書の交付や在留資格の変更申請に必要とされます。
外食業国内試験(2022年度)
国籍 | 合格者数 |
ベトナム | 7,184 |
中国 | 631 |
ミャンマー | 1,042 |
ネパール | 274 |
韓国 | 145 |
台湾 | 129 |
バングラデシュ | 86 |
タイ | 69 |
フィリピン | 48 |
香港 | 41 |
モンゴル | 36 |
スリランカ | 32 |
マレーシア | 18 |
合計(上記の国+その他) | 9,979 |
受験者数15,691人
合格者数9,979人
合格率63.6%
(参考)2022年度外⾷業及び飲⾷料品製造業の特定技能1号技能測定試験 国内試験実施状況
外食業国外試験(2022年度)
国籍 | 合格者数 |
フィリピン | 421 |
ネパール | 570 |
インドネシア | 562 |
ミャンマー | 1446 |
カンボジア | 369 |
タイ | 300 |
スリランカ | 261 |
合計 | 3,929 |
受験者数5,528人
合格者数3,929人
合格率71%
(参考)2022年度外食業及び飲食料品製造業の特定技能1号技能測定試験 国外試験実施状況
【2023年日本版】特定技能「外食」試験日程 ・試験場所
2023年度試験日程
第1回:2023.6.12~7.1 終了済み
第2回:2023.9.24~10.19 終了済み
第3回:
マイページ新規登録申請期限:2023年11月17日まで
受験申請期間(一次募集):2023年11月28日 AM10:00 から 11月30日 PM5:00まで
受験料支払期限(一次募集):2023年12月4日まで
受験申請期間(二次募集):2023年12月6日 AM10:00 から 12月7日 PM5:00まで
受験料支払期限(二次募集):2023年12月11日まで
受験票の発行:2023年12月中旬
合格発表:2024年2月上旬
マイページの登録が完了している人のみが受験申請が可能です。登録が完了しているとは、OTAFFから「特定技能試験 マイページの登録が完了しました」というメールが届いている人を指します。
(参考)第3回 外食業特定技能1号技能測定試験 2023年度 第3回 試験日程(全体の流れ)
※詳細なスケジュールは、決定次第OTAFFのウェブサイトで公表される予定であり、試験地は日本の農林水産省との調整により変更される可能性があるため注意が必要です。
2023年度試験場所
試験場所は開催回によって異なります。次回の第三回では以下の開催地域が発表されています。
・北海道
・宮城県
・茨城県
・埼玉県
・東京都
・愛知県
・大阪府
・兵庫県
・広島県
・香川県
・福岡県
・宮崎県
・沖縄県
詳しい試験会場の場所と日時はこちらから確認してください。
特定技能1号技能測定試験 外食業国内試験
【2023年海外版】特定技能「外食」試験日程 ・試験場所
2023年度は全ての試験実施国で試験が終了しています。
(2023年11月6日)現在、2024年度の日程は未定となっています。
今年発表された、海外実施国は以下の7カ国です。他の国については、政府間の協議の後、外食分野における試験を実施できる環境が整った国から順次実施される予定です。
・ネパール
・ミャンマー
・インドネシア
・フィリピン
・スリランカ
・タイ
・カンボジア
詳しい試験会場の場所と日時はこちらから確認してください。
特定技能1号技能測定試験 外食業国外試験
特定技能「外食」の試験問題
試験について
試験言語 :日本語(国内試験・国外試験とも。試験問題・解答選択肢の漢字にはルビあり)
試験方法:
( 国内試験)ペーパーテスト(マークシート)方式
( 国外試験)コンピュータ・ベースド・テスティング(CBT)方式
試験項目
学科試験:学科試験では以下の項目に関する知識と業務上必要な日本語の能力を測定する
実技試験:実技試験では図やイラストを使って、特定の状況を再現し、正しい行動がとれるかどうかを測定する。また、所定の計算式を使って、作業の計画立案ができるかどうかを測定する。
項目 | 主な内容 | 学科試験 | 実技試験 |
衛生管理 | 一般的衛生管理に関する知識、HACCPに関する知識、食中毒に関する知識など | 10問 満点:40点 | 満点:40点 |
飲食物調理 | 調理に関する知識、食材に関する知識、調理機器に関する知識など | 10問 満点:30点 | 満点:30点 |
接客全般 | 接客サービスに関する知識、食の多様化に関する知識、クレーム対応に関する知識など | 10問 満点:30点 | 満点:30点 |
学科:合計30問 合計100点
実技: 合計15問 合計100点
※配点選択が可能
問題数の変更はありませんが、タイプにより、接客全般と飲食物調理の配点の割合が変わります。
自分の希望の職種に応じて配点を選択できます。
Aタイプ:標準的な配点で、衛生管理4割、飲食物調理3割、接客全般3割となります。
Bタイプ:飲食物調理主体の配点となります。衛生管理4割、飲食物調理4割、接客全般2割となります。
Cタイプ:接客全般主体の配点となります。衛生管理4割、飲食物調理2割、接客全般4割となります。
技能試験の例題
上記で説明したように、外食の技能試験には3つの項目があります。今回は問題の雰囲気をつかんでいただくために、それぞれの項目から1つずつ例題を挙げますので参考にしてみてください。
(1)衛生管理
次の中で、サルモネラ属菌に汚染されている可能性が高いものはどれですか。一つ選びなさい。
1.米 2.鶏肉 3.魚介類
(2)飲食物調理
包丁でけがをしないための行動について、正しいものを一つえらびなさい。
1.包丁を持って移動するときは、まわりの人に声をかけながら移動します。
2.包丁を使用しているときは、手元ではなく、常にまわりの人の動きを注視します。
3.使用した包丁は、いつでもすぐに使えるようにするために、作業台に置いたままにします。
(3)接客全般
お客様に提供した料理に虫が入っていました。まずは何をすべきですか。正しいものを一つ選びなさい。
1.お客様にお詫びをします。
2.お客様に自分で虫を取ってもらうようにお願いします。
3.料理に虫が入っても、料理は安心して食べられることをお客様に伝えます。
答え:2.1.1
試験対策のテキスト
特定技能「外食業」の技能試験対策のために一般社団法人「日本フードサービス協会」が作成した学習用テキストがあります。試験は日本語で行われるため出来るだけ日本語のテキストでの学習が好ましいでしょう。しかし、日本語以外にも以下の言語に対応したテキストもあります。ぜひ学習の際は参考にしてみてください。
・英語
・ベトナム語
・クメール語
・ミャンマー語
・タイ語
・インドネシア語
・ネパール語
それぞれのテキストの詳細に関しては以下のURLからご覧ください。
日本フードサービス協会‐外食業技能測定試験学習用テキスト
特定技能「外食」の技能試験申し込みの手順
特定技能「外食」の技能試験の申込には大きく分けて2つの手順があります。まずは、申込をするためにマイページに登録しなければなりません。
マイページ登録方法
1.マイページの仮登録をする
以下のURLからホームページに入り、「国内試験 マイページ登録」ボタンをクリックします。
メールアドレス登録画面に飛ぶので、メールアドレスを入力して登録します。
2.情報入力
1で登録したメールアドレス宛に、OTAFF(試験を実施している団体)からメールが届きます。
メールを開き、メール内のURLをクリックします。マイページ登録申込フォームに飛ぶため、必要な情報を登録します。
(必要な情報)
・メールアドレスやパスワードなど
・名前や生年月日などの個人情報
・パスポートナンバーなどの本人証明書
・顔写真
・アンケート
3.登録完了
情報入力の完了、送信後、約5営業日以内に審査結果が送られてきます。審査に不合格であった場合は登録した情報に誤りがあります。もう一度情報を入力してください。
試験申し込み方法
1.ログインする
ホームページからマイページへログインする。
2.日時・会場の選択
メニューから「試験一覧」をクリックし、受験したい試験の業種を選ぶ。次に、受験する試験の会場を選択する。
3.情報の確認
試験の申し込み情報や合格した場合の留意事項などを確認し、試験の申し込みをする。
試験の注意点について
技能試験を受けるにあたって、前もって必ず知っておくべきポイントを5つ簡単に解説します。
- 医療・福祉施設給食製造の技能実習2号を良好に修了した人は、技能試験と日本語試験が免除されます。
- その他の技能実習2号を修了した人は、日本語試験が免除されます。
- 試験に合格しても「特定技能」の在留資格が自動的に与えられるわけではなく、在留資格認定証明書交付または在留資格変更の申請が承認される保証はありません。
- 試験は抽選制で、申込数が定員を下回った場合は全申込者が自動的に当選します。
- 1次募集の受験料支払期限後に空席がある場合は、その会場で2次募集が行われます。
まとめ
今回は特定技能「外食」の試験に関する情報をまとめました。まずは初めに解説した、特定技能「外食」で出来る業務をしっかり押さえましょう。そして、試験概要や注意点を踏まえたうえで申し込み手順を参考に申し込んでみてください。試験は日本語で行われるため、しっかり対策を取ることが大切です。