コラム

在留カードの偽造が多発!?罪になる理由や確認方法を詳しく解説

外国人が日本で働くためには、就労が許可されている在留カードを所持している必要があります。しかし、近年は偽造の在留カードも出回っており、知らずに不法労働者を雇っていたというケースも耳にします。そこで、雇い主がトラブルに巻き込まれることがないよう、在留カードの種類や偽造在留カードの見極め方をご紹介します。

そもそも在留カードとは

在留カードとは、日本に3ヶ月以上滞在する外国人が身分証明書として携帯することを義務付けられているカードです。法務省出入国在留管理庁が発行しており、氏名や国籍、住居地、在留資格、在留期間などが記載されています。合法に滞在しているか確認することができ、外国人を雇入れる場合も在留カードの情報を見て判断します。

在留資格の種類

在留カードの種類は1種類ですが、記載されている在留資格の種類によって就労できるか・できないかが違ってきます。在留資格は全部で29種類あり、それぞれ在留期間や活動範囲が異なります。就労可能とされていてもアルバイトは禁止、労働時間は週28時間までなど、種類によって雇用形態や労働時間も違います。

在留カードの偽造事件の増加の背景

日本における在留カードの偽造事件の増加の背後にはさまざまな要因が影響しています。そもそも外国人が日本で働くためには就労可能な在留カードが必要です。

最近では、市場で偽造在留カードが出回っており、これらの偽造カードはSNSなどで約1,000円で取引されており、その検挙件数は年々増加しています。
来日外国人による特別法犯の主要な罪名と検挙件数の推移について、『令和3年版 犯罪白書』によると、入管法違反の検挙件数は、平成17年から減少傾向にありましたが、平成25年と26年に増加し、27年には減少しました。しかし、28年以降は再び増加し続け、令和2年には6,534件に達し、前年比で637件(10.8%)増加しました。令和2年における入管法違反の検挙件数を違反の種類別に見てみると、最も多かったのは不法残留で4,178件でした。次いで、旅券等不携帯・提示拒否(在留カード不携帯・提示拒否および特定登録者カード不携帯・提示拒否を含む)が977件、偽造在留カードの所持などが790件、資格外活動が290件でした。

令和2年【違反の種類別】入管法違反の検挙件数

  1. 不法残留:4,178件
  2. 旅券等不携帯・提示拒否(在留カード不携帯・提示拒否および特定登録者カード不携帯・提示拒否を含む):977件
  3. 偽造在留カードの所持など:790件
  4. 資格外活動:290件

(参考)令和3年版 犯罪白書 第4編/第9章/第2節/2

在留カードの偽造が増加する背後にはいくつかの要因が考えられます。まず、経済的な誘因が関与しており、就労や福祉の権利を不正に手に入れようとする個人が増加しています。また、セキュリティ対策が不十分である場合、偽造を防ぐ手段が不足しており、これが増加の要因となっています。

さらに、一部の犯罪組織が偽造文書を提供・取引し、需要を高めている可能性も考えられます。また、移民や難民の流入が増加すると、在留カードなどの文書が不正に使用されるリスクも高まります。政府はこれらの問題に対処するための適切な対策を講じる必要があります。

在留カードの偽造事件の一例

▼千葉県、ベトナム・インドネシア・中国などの偽造在留カードが見つかり中国人と日本人を含む6人逮捕
最近、日本国内で民家で摘発された場所で、数多くの外国人の偽造身分証が見つかりました。この偽造身分証には、パソコン、プリンター、さらには約120枚もの偽造「在留カード」が含まれていました。日本に在住する外国人に発行される「在留カード」は、日本での滞在資格や就労許可などを示すもので、この制度は10年以上前から存在しています。しかし、偽造技術はますます巧妙になり、コストも低くなり、入手が容易になっていると言われています。

昨年の9月、千葉県旭市の田舎の家に、兵庫県警察と警視庁の捜査員が入りました。そこで見つかった偽造「在留カード」は、ベトナム、インドネシア、中国などの国籍を持つ外国人のものでした。押収されたパソコンには、約2万人分の顧客データが保存されていました。

県警察などの合同捜査本部は、中国人と日本人を含む6人を、偽造「在留カード」の製造および提供の疑いで逮捕しました。この偽造身分証の製造拠点は過去最大規模とされ、当局はこのグループが最大で1億4千万円以上の売り上げを持っていたと推定しています。

(参考)在留カード「偽造工場」国内で乱立 本物と見分けつかない精巧さ、安く入手容易に 制度開始10年 | 総合 | 神戸新聞NEXT

▼愛知県、イラン人男性が偽造在留カードを使用して金品の質入れ詐欺で逮捕
イラン人男性が偽造在留カードを使用して愛知県小牧市での金品の質入れ詐欺で逮捕されました。

逮捕されたのは、住所不定かつ職業不詳の39歳のイラン国籍の男性、ランズバルザデス・モハマド容疑者です。

警察によると、容疑者は今年3月に、小牧市の質屋で従業員に偽造された在留カードと運転免許証を提示して、別の人物として金のネックレスやブレスレットを質入れし、現金90万円以上を詐取しようと試みた疑いがかけられています。

従業員は免許証の特徴などに疑念を抱き、110番通報をしました。このため、容疑者は逃走しましたが、警察は容疑者を名古屋市内で発見し、2023年9月28日に逮捕しました。

容疑者は警察の取り調べで、「在留カードや免許証が偽物だとは知らなかった」と否認しており、警察は入手経路などを調査中です。

(参考)偽造在留カードでネックレスを質入れ イラン人男逮捕 潜伏先で発見 | TBS NEWS DIG

在留カードの確認ミスによる企業側のリスク

外国人を雇用する企業が在留カードの確認を怠ると、法的責任を問われる可能性があります。外国人が就労できると本人が主張していても、就労資格がない外国人を雇用する際に、在留カードの確認を怠った場合、企業は不法就労助長罪に問われる可能性があることを念頭に置いておきましょう。

よく企業の言い訳として、「外国人の就労資格を知らなかった」「週に働ける時間についての情報を持っていなかった」という主張がありますが、これらの主張が聞き入れられるとは限りません。

実際、入管法72条の2では、「外国人に不法な労働活動をさせた者」は、「知識不足を理由に法的責任を免れることはできない」と規定されています。ただし、過失がない場合にはこの限りではありません。

不法就労助長罪が適用される場合、懲役刑、罰金刑、またはその両方が科せられる可能性がありますので、刑事的な罰則に対する認識を高め、法令を遵守することが、企業にとっても重要です。

偽造在留カードの見極め方・確認方法

偽造在留カードかどうか見極める方法として、法務省は3つの方法を推奨しています。

①目視で確認する

在留カードには、偽造防止のために以下の5つの対策が施されていますので、まずは、目視で5つの内容を確認してみましょう。

  • カードを上下に傾けると白抜きでMOJと記載された絵柄がピンクから緑色に変化する
  • カードを上下に傾けるとカードの左端が緑色からピンクに変化する
  • カードを左右に傾けると、写真の上のホログラムのMOJの文字が3D的に動く
  • カードを90度傾けると、写真の下の文字の白と黒が反転する
  • 暗い場所でカードの表面に光を当てると、MOJの透かし文字が見える

②出入国在留管理庁の在留カード番号失効情報照会から確認する

出入国在留管理庁には「在留カード番号失効情報照会」というWebサイトがあり、偽造の在留カードか確認するのに役立てることができます。在留カードの番号などの基本情報を入力すると、在留カードが有効であるかわかります。有効でないものは、在留期間が失効している、もしくは偽造の在留カードの可能性が高くなります。

下記、出入国在留管理庁の公式ページからご確認いただけます。

【出入国在留管理庁】在留カード等番号失効情報照会

③出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションを利用する

出入国在留管理庁は偽造在留カードの増加や巧妙化に向けた対策として、「在留カード等読取アプリケーション」を発表しました。在留カードに組み込まれているICチップの情報を読み込み、偽造かどうかを判定できるというものです。ICリーダーが別途で必要ではありますが、アプリは出入国在留管理庁のWebページから無料でダウンロードすることができます。ハイテク機能を使った、確実性の高い偽造在留カードの見極め方法です。

下記、出入国在留管理庁の公式ページからご確認いただけます。

【出入国在留管理庁】在留カード等読取アプリケーション サポートページ

【例外】在留カードを所持していない場合

例外として、外国人が在留カードを持っていない場合がありますが、在留カードを持っていない理由として、在留カードの更新や切替などの際は、1週間から1か月程度所持していない期間があることもありますので、在留カードを所持していない場合は、その理由を確認しましょう。

在留カードのチェックポイント

在留カードチェックポイント

偽造であるかだけでなく、在留カードでチェックすべき項目はいくつかあります。ここからは、在留カードのチェックポイントを3つ紹介します。

①本人であるかを確

在留カードをチェックする時は、顔写真とカードを所持する人物が同一であるか確認する必要があります。外国人の間では在留カードの貸し借りが行われているケースもあり、他人の在留カードを使って就業を試みることもあるので注意が必要です。

②在留期限を確認する

在留期限が切れている人を雇い入れると不法滞在の人を雇用していることになるため、雇い主が罪に問われることがあります。1日でも過ぎると不法滞在になってしまうため、在留期限はしっかり確認するようにしましょう。

就労制限の確認

就労制限には5種類の記載方法があり、文言を見ることによって就労できるか否かを確認することができます。

  • 在留資格に基づく就労活動のみ可:「在留資格」で定められた範囲内で就労可能
  • 指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可:「在留資格」で定められた範囲内で就労可能
  • 指定書により指定された就労活動のみ可:「在留資格」で定められた範囲内で就労可能
  • 就労制限なし:無制限で就労可能
  • 就労不可:基本的に就労不可だが「資格外活動許可」があれば就労できることもある(「資格外活動許可」は在留カードの裏面の資格外活動許可欄に明記)

偽造在留カードと判明した場合の企業の対応方法

上記で紹介した「偽造在留カードの見極め方・確認方法」で、もし仮に企業が、外国人の面接や面談、入社の際に偽造が疑われる在留カードを発見した場合は、管轄の出入国在留管理官署にすぐに問い合わせをしてください。

下記、出入国在留管理庁の公式ページからお近くの地方出入国在留管理官署をご確認いただけます。

【出入国管理庁】地方出入国在留管理官署

在留カードをしっかり確認して外国人を採用しよう

偽造の在留カードを見極める技術も進んでおり、「在留カード等読取アプリケーション」を利用すれば高精度で偽造の在留カードを見つけることができます。不法就労助長罪の罪に問われるリスクも低くなるでしょう。ただし、これからさらに偽造在留カードが巧妙化していくことも予想されるので、偽造在留カードの情報をアップデートしていく必要があります。

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